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「近金」vs「遠金」、平壌はいま権力闘争中

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
北朝鮮の権力核心部で金正恩(キム・ジョンウン)をめぐる派閥間の権力争いが露骨化しているという観測が提起されている。これまで水面下で進んでいた対立が表面化した代表的な事例が玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長の処刑という分析だ。内外の北朝鮮専門家らは5月9日にモスクワで開かれたロシアの戦勝記念式に金正恩が出席しなかったのもその延長線だと解釈している。

北朝鮮に頻繁に出入りする消息筋は、玄永哲処刑の背景について、金正恩に近い「近金」と、金正恩と距離を置く「遠金」の勢力間対立を挙げている。「遠金」は趙延俊(チョ・ヨンジュン)、ミン・ビョンチョル労働党組織指導部第1部部長、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長、パク・テソン平安南道(ピョンアンナムド)党秘書など組織指導部出身だ。彼らは抗日パルチザン2世と3世で、組織指導部で長年にわたり経験を積んできた。組織指導部は北朝鮮の思想・人事を担当する労働党の核心部署だ。金正恩と「遠金」との対立は金正日(キム・ジョンイル)が2011年に突然死去してから始まったという。

「遠金」は政治新人の金正恩を“雇われママ”として前に出し先軍政治回帰を試みたという。まるで高麗時代の門閥貴族のように実質的に北朝鮮を統治しようとしたということだ。これは金正日が死去するまで最も心配した部分だ。


これに伴い、金正日は息子を護衛する「近金」親衛勢力を前進配置した。張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長、崔竜海(チェ・ヨンヘ)党秘書、朴道春(パク・ドチュン)前国防委員、金養建(キム・ヤンゴン)統一戦線部長、金平海(キム・ピョンヘ)幹部部長らだ。張成沢を除くと残りは自身の勢力がないテクノクラートだ。処刑された玄永哲も金正恩が抜てきしたという点で「近金」に分類される。

だが「遠金」の牽制で張成沢が2013年に処刑され、崔竜海は軍総政治局長と政治局常務委員などナンバー2まで上がったものの軍総政治局長から退き政治局委員に降格された。最近では朴道春もポストから退いた。金養建は李明博(イ・ミョンバク)前大統領の著書『大統領の時間』でシンガポールでの秘密接触が公開されたことで苦境に立たされたが再び生き返った。韓国政府関係者は「金養建の健在は南北関係改善に対する金正恩の意志とみることができる」と説明した。

金正恩が昨年から対南関係改善の意志を明らかにしてすぐに翻意したこと、対話の雰囲気が高まる環境から挑発と強硬に一貫していることなどが金正恩個人の決心と意志だけではないかもしれないという見方だ。

それなら最近の恐怖政治は金正恩が強圧的な方法で唯一指導体制の実権を確保しようとしているものとみることができる。金正恩はすでに昨年から「遠金」を強く牽制してきた。国家安保戦略研究院のヒョン・ソンイル首席研究委員は、「北朝鮮は昨年9月に反党分派行為をしわいろを受け取ったという罪目などで党組織指導部副部長と宣伝部幹部20人余りを銃殺した」と明らかにした。

北朝鮮の軍部で玄永哲が務めた人民武力部長は行政職のためで軍総政治局長のように実権は多くない。したがって「近金」である玄永哲の処刑は「遠金」に側近も処刑できるということを見せることで最後通告に近い警告を送ったことになる。

一方、「遠金」は金正恩が格に見合わない些細なことを現地視察する姿を労働新聞と朝鮮中央テレビにしばしば露出させている。北朝鮮内部の権力対立に注目する専門家らはこうしたメディア戦術を、金正恩を格下げさせる試みのひとつとして解釈したりもする。金正恩の神秘感を希薄にさせ、困窮した人民の生活と乖離感を与えて拒否感を呼び起こそうとする意図が背景にあるということだ。(中央SUNDAY第429号)





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