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【時視各角】サイレンの甘い誘惑、デフレーション=韓国(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
民間防衛訓練のたびに鼓膜に響く音を出すサイレン。しかし本来の語源は違う。激しく波打つ崖でリラ(古代楽器)をひきながら歌うギリシャ神話の魔物がサイレンだ。甘い歌声は船員の心を引きつけた。濃霧の向こう側に口を開いた岩壁に向かって船は突進した。その瞬間、船員はサイレンの笑い声とともに黒い海の中に放り出された。最近、我々の周辺のあちこちからも甘い声が聞こえる。あるピザ会社では1枚9900ウォン(約1100円)のピザが大ヒットした。1週間、2秒に1枚ずつ15万枚を売った。驚いたファストフード店も2000ウォンの朝食を次々と出した。年末年初の販売が不振だったデパートは3000億ウォン(約330円)のブランド品セールを準備中だ。消費者は大喜びだ。

しかし何か引っかかる。1990年代初めの日本が思い浮かぶ。円高バブル崩壊で消費が冷え込むと値下げ戦争に火がついた。100円ショップも登場した。今は聞き慣れた「価格破壊」という言葉が登場したのもこの頃だ。日本人は両手をあげて歓迎した。物価上昇率が2年連続1%台が続き、マイナスに落ちると、「よいデフレ」と評価した。戦後の高度成長期を経験した日本人は物価下落が恩寵どころか災難になるとは夢にも思っていなかっただろう。新古典派主流経済学の教科書も物価と消費は反比例すると教えてきた。物価が下がれば消費が回復するという公式は、水が高いところから低いところに流れるという自然の法則のように疑いの余地がない命題だった。庶民としても物価が落ちるのを歓迎しない理由はなかった。

しかし日本がその後どのような道を歩んだかは説明する必要もない。物価が持続的に落ちるデフレがその反対のインフレより危険であるのはこのためだ。インフレは直ちに庶民の家計簿に影響を与える。苦痛が肌に突き刺さる。これとは違いデフレはサイレンの歌声のように甘い。飽きない。デフレ懸念はオオカミ少年の嘘のようになりがちだ。有権者が喜んでいるのに、その場をつぶす政治家や官僚は出てきにくい。日本が「失われた20年」の間、一貫性のない政策で機会を逃した理由だ。しかし当時の日本は、物価と消費が反比例するという主流経済学理論が診断できない慢性病にかかっていた。ベビーブーマー世代の退職と高齢化だ。

【時視各角】サイレンの甘い誘惑、デフレーション=韓国(2)

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