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【コラム】怒りをやめてはいけない理由…セウォル号の惨事(1)

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
2005年8月、北大西洋で発生したハリケーンのうち6番目に強力なカトリーナが、米国南東部のルイジアナの海岸を襲った。秒速75メートルの強風と豪雨が堤防を決壊し、海水面より低いニューオーリンズの80%以上が浸水した。米国史上最悪の自然災害として記録されたこの惨事で2500人以上が命を失った。

問題は犠牲者の大半が黒人だったいう点だ。ニューオーリンズの住民の3分の2が黒人であるという理由もあるが、黒人密集地域の下水道と排水口施設が劣悪であるため、より大きな被害が発生した。政府の遅い対応も批判された。白人密集地域が被害を受けていれば、政府の復旧作業はもっと速かったはずだという不満が出てきた。当時、メトロポリタン黒人監理教会のロナルド・ブラックスタン牧師は「カトリーナが米国社会の仮面をはがした」と叫んだ。災難を経験した後、人々が同じ米国社会でもお互いどのように異なる生活をしていたかを知ることができたということだ。

それが残骸の山の上にカトリーナが落としていった“贈り物”といえば贈り物だった。自然災害が社会的な覚醒を呼び起こしたのだ。黒人が自分の地位を自覚し、より良い生活のために変化を叫び始めた。


これがドイツの社会学者ウルリッヒ・ベック教授がいう「解放的な破局(Emancipatory Catastrophism)」だ。地球温暖化のような「悪い結果」が意図しなかった「良い結果」をもたらす可能性があるという言葉だ。気候変化が問題になり、眠っていた生態正義が徐々に呼び覚まされ、地球を保護しようという運動が起き、このために超国家的な危険共同体が作られたりもするということだ。

こうした良い結果をベック教授は「社会的カタルシス」と呼ぶ。ハリケーンの被害を人種的不平等というグローバルな正義の問題に昇華させる作業のことだ。とはいえ、社会的カタルシスは自ずと起こるわけではない。他人の苦痛を目撃し、彼らの傷を治癒し、その病源をなくそうと努力する“担持者”集団なしには不可能だ。その人たちの努力で「変革」が起きるが、ソウル大の韓相震(ハン・サンジン)教授はこれを「変貌(frame reshaping)」という、ベック教授も認めるより的確な表現に翻訳する。

破局が変貌の動因になるというベック教授の説明は我々を目覚めさせる。セウォル号の惨事を国家的な破局として感じていた国民に、前向きで未来志向的な展望を提示してくれるためだ。先週あったベック教授の訪韓講演がとりわけ関心を引いた理由だ。ベック教授の講演が主に気候変化に関するものだったにもかかわらず、講演後にセウォル号惨事に関する質問が多かったのも当然のことかもしれない。

ベック教授の目に映ったセウォル号惨事は、怒る国民と責任の回避に汲々とする政府の姿だった。このような政府の無責任は国民的な怒りをさらに悪化させ、政府の無能と無知をそのまま露出させた。

(中央SUNDAY第383号)



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