セウォル号沈没事故で韓国の社会が学んだ教訓のひとつは、事故収拾過程も予防に劣らず重要ということだ。事件の再発を防ぐためには誠意を持って透明に原因を徹底的に把握し、責任の所在を明確にしなければならない。指導層は責任を回避せず自分たちの誤りを反省する姿を見せてこそリーダーシップを回復できるということも高い代価を払って体得した教訓だ。

そうした点で洪明甫（ホン・ミョンボ）サッカー国家代表チーム監督に対する大韓サッカー協会の留任決定過程は国民にまた別の失望感を抱かせる。帰国した代表チームに対するサッカーファンからの“あめの洗礼”にもかかわらず、「代案がない」という理由で洪監督を留任させたが、形式と内容は不適切なものと評価されている。執行部の無責任と無能力はもちろん協会の閉鎖的な密室行政がそのまま表われた。

まず許丁茂（ホ・ジョンム）副会長の１人での記者会見は、「果たしてサッカー協会は本当に反省しているのだろうか」という疑問を呼び起こしている。国民は協会の責任を負っている鄭夢奎（チョン・モンギュ）会長が記者会見場にも出てこず副会長を代わりに出したことに対し、「状況認識を正しくできていないのか、責任を負わせられないよう小細工を働かせたのではないのか」と批判している。


李栄杓（イ・ヨンピョ）元国家代表チーム選手が指摘したように、ワールドカップはＦＩＦＡ加盟２１０カ国のサッカー協会が４年間にわたり準備してきたものを見せ評価される大会だ。このため各国のサッカー協会は大会に適合した監督を選任し、監督が選手と心を合わせて自分たちの能力を最大限見せられるよう物心両面で支援している。したがって代表チームの失敗は監督個人を超え協会次元の失敗と規定されなければならないだろう。今回のワールドカップ大会で予選敗退したイタリアサッカー協会会長が監督とともに責任を負って辞任したのも同じ脈絡で見ることができる。だが鄭会長と許副会長はあたかも自分たちが代表チームの責任の有無を判断する審判者的な位置に立っているかのように「われ関せず」式の話法と態度を見せており国民のひんしゅくまで買っている。

サッカー協会はまた、洪監督の留任を決めるのに当たり、国民やサッカーファンより代議員の意見を集めたことをまるで国民全体の望みであるかのように牽強付会したという疑惑も買っている。「義理サッカー」「人脈サッカー」の根源とされる協会執行部の決定に、「９８年にはなぜ…？？？　１人で…」というチャ・ドゥリ選手のフェイスブックの書き込みが多く人たちの支持を得ているのも密室行政にともなう公平性不在の副作用を端的に見せている。

今回の機会にサッカー協会はしっかりとしたサッカー行政と、先進サッカーの基盤を立て直すための対策準備に入らなければならない。このためにはサッカー協会執行部がまず自分たちの責任を痛感することから優先されなければならないだろう。（中央ＳＵＮＤＡＹ第３８２号）