指揮者ダニエル・ハーディングに音楽は「人々に生きていく力と勇気を与える治癒剤」だ。(写真=ビンチェロ)
ハーディングは2011年3月11日、新日本フィルハーモニー交響楽団の指揮のため東京に滞在していた。入場券は売り切れており客席は満席になっただろう。しかしこの日午後2時46分、東北地方で超大型地震が発生し、東京都内は大混乱に陥った。1800席規模のすみだトリフォニーホールにはようやく105人が集まった。団員の何人かは公演会場に来られず、ステージに上がった団員も家族と連絡がつかない状況で演奏に集中しにくかった。生まれて初めて地震を体験したハーディングはあわてたが恐怖を克服し指揮台に立った。
午後7時15分、余震が続く中でハーディングは指揮棒を手にした。指揮者と団員と聴衆は音楽の力を信じた。グスタフ・マーラーの交響曲第5番は作曲者自身が「人生の真ん中でも私たちは死の中に存在する」と話した悲しみの絶唱だ。第4楽章「アダージェット」は人間が拒絶することはできない運命を音楽で聞かせる。この日マーラー第5番は人々の記憶に深く刻まれる名演奏となった。
音楽会が終わった後、ハーディングはロビーで聴衆と1人1人固い握手を交わした。交通の便がなく帰宅できない人たちのためにホールは開放され、ハーディングと団員は聴衆とともに朝を待った。その忘れられない夜を記憶しハーディングは3カ月後に同じ指揮台に立った。災害支援と3月11日のマーラーを聴けなかった聴衆のために再びマーラーの「交響曲第5番」を指揮した。幕間には直接義援金募金箱を持って客席を回り被災者支援を訴えた。
新日本フィルが撮影したビデオ映像を基に制作された「3月11日のマーラー」で、ハーディングはNHKとのインタビューを通じてこのように話した。「この日を境に音楽に対する私の考えが変わりました。今後私はそれを永遠に継続するでしょう。私の中のマーラー交響曲第5番は3月11日の記憶として刻まれています」。
ハーディングは今回の来韓公演2日目となる11日にやはりマーラーの交響曲第1番を演奏する。彼にとってマーラーの交響曲は人類の悲哀を治癒する歌として刻まれたようだ。
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