私のいとこはおよそ20年前、ニュージーランドに移民した。暮らし向きの良かった大学の同窓生の多くが一気に海外へと旅立っていった。教育問題が一番大きかった。当時小学生だった甥や姪は、ニュージーランドで大学を卒業し、それぞれオーストラリアと韓国で仕事をしている。
移民生活中、このいとこは「ニュージーランドはつまらない天国、韓国はおもしろい地獄」と言いながら韓国を懐かしがった。万事に争いが絶えない疲れた生活だったが、それが韓国社会特有の活力と躍動性につながるということだった。韓国を離れて出る言葉なので限界はあるが、彼の友の言葉も皆同じだった。冗談半分真面目半分で「お金さえ少しあれば韓国のように楽しく暮らせる国もほかにない」と。このうち数人は子どもが成長してから韓国に戻ってきた。
ところでそれも昔話のようだ。最近、あるモバイル世論調査結果に目を引かれた。「生まれ変わるなら、大韓民国に生まれたくない」(57%)という回答が「生まれ変わるなら、大韓民国に生まれたい」(43%)よりも多かった。「生まれたくない」という回答は20代が60%で最も多かった。韓国に生まれたくない理由は過度な競争や厳しい入試、スペック(注)づくりなどだった。最も暗うつな韓国の社会現実としては「政治」が挙げられた。回答者の70%が韓国は公正でなく、両極化が深刻だと答えた(ドゥイットサーベイ調査)。
ロシアに帰化した後、今回のソチ冬季オリンピック(五輪)で善戦したヴィクトール・アンに対する若者世代の肯定的な反応もこれと無関係でないように思われる。いつもなら「裏切り者」と断捨されるところを「国家も選択」という成熟した意見が目立った。韓国社会不公正の象徴のような彼が、他国の英雄になって祖国に一発食らわした逆転ドラマに惜しみなく拍手を送った。根が深いスポーツ民族主義が一気に崩れたように見えた。もちろんこれは若者世代の脱国家主義・脱民族主義指向を立証するものだが、もしかしたらその意識の底辺に「また韓国に生まれたくない」という気持ちが隠れているのではないだろうか。
ソウル大言論情報学科イ・ジュンヌン教授はこれを「精神的亡命状態」と表現した。「身体はここにあるが、精神的にはどこの国でも関係ないというふうに生きること。機会が与えられるならばいくらでも祖国を離れる」という精神状態だ。「すでに国家は移動通信サービスのように好きなように脱退して新しく加入できるものになってしまった。前途有望で野心に満ちた若者は自分たちの未来をこの土地でない他の国に見ている。彼らの選択を問題にする訳にはいかないが、未来の英雄を放り出す国、亡命選手を応援する国民がこのように多い国は問題があるのでは」とも書いている。
国家主義の古い罠を投げ捨てて世界人の一員として生きることと、再び大韓民国の国民に生まれたくないことには天地の開きがある。よりによって3月1日の朝だ。大韓民国は「精神的亡命者」たちの国なのか。
注:各自が持つ学歴や資格、能力などのこと。
ヤン・ソンヒ文化スポーツ部門部長待遇
移民生活中、このいとこは「ニュージーランドはつまらない天国、韓国はおもしろい地獄」と言いながら韓国を懐かしがった。万事に争いが絶えない疲れた生活だったが、それが韓国社会特有の活力と躍動性につながるということだった。韓国を離れて出る言葉なので限界はあるが、彼の友の言葉も皆同じだった。冗談半分真面目半分で「お金さえ少しあれば韓国のように楽しく暮らせる国もほかにない」と。このうち数人は子どもが成長してから韓国に戻ってきた。
ところでそれも昔話のようだ。最近、あるモバイル世論調査結果に目を引かれた。「生まれ変わるなら、大韓民国に生まれたくない」(57%)という回答が「生まれ変わるなら、大韓民国に生まれたい」(43%)よりも多かった。「生まれたくない」という回答は20代が60%で最も多かった。韓国に生まれたくない理由は過度な競争や厳しい入試、スペック(注)づくりなどだった。最も暗うつな韓国の社会現実としては「政治」が挙げられた。回答者の70%が韓国は公正でなく、両極化が深刻だと答えた(ドゥイットサーベイ調査)。
ロシアに帰化した後、今回のソチ冬季オリンピック(五輪)で善戦したヴィクトール・アンに対する若者世代の肯定的な反応もこれと無関係でないように思われる。いつもなら「裏切り者」と断捨されるところを「国家も選択」という成熟した意見が目立った。韓国社会不公正の象徴のような彼が、他国の英雄になって祖国に一発食らわした逆転ドラマに惜しみなく拍手を送った。根が深いスポーツ民族主義が一気に崩れたように見えた。もちろんこれは若者世代の脱国家主義・脱民族主義指向を立証するものだが、もしかしたらその意識の底辺に「また韓国に生まれたくない」という気持ちが隠れているのではないだろうか。
ソウル大言論情報学科イ・ジュンヌン教授はこれを「精神的亡命状態」と表現した。「身体はここにあるが、精神的にはどこの国でも関係ないというふうに生きること。機会が与えられるならばいくらでも祖国を離れる」という精神状態だ。「すでに国家は移動通信サービスのように好きなように脱退して新しく加入できるものになってしまった。前途有望で野心に満ちた若者は自分たちの未来をこの土地でない他の国に見ている。彼らの選択を問題にする訳にはいかないが、未来の英雄を放り出す国、亡命選手を応援する国民がこのように多い国は問題があるのでは」とも書いている。
国家主義の古い罠を投げ捨てて世界人の一員として生きることと、再び大韓民国の国民に生まれたくないことには天地の開きがある。よりによって3月1日の朝だ。大韓民国は「精神的亡命者」たちの国なのか。
注:各自が持つ学歴や資格、能力などのこと。
ヤン・ソンヒ文化スポーツ部門部長待遇
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