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【取材日記】「平等主義」に挫折したサムスンの採用実験

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
サムスンの高位関係者が29日午前、記者室を訪れた。この日開かれた社長団会議を説明するためというのが名目だったが、雰囲気はことのほか沈んでいた。朝刊新聞のほとんどが「サムスンの新しい採用制度、無期限留保」の記事で埋め尽くされていたところだった。この関係者は気まずそうに笑いながら「(サムスングループが)重傷を負った」と短い感想を言い残した。前日、すでに新しい採用制度留保の発表とあわせて「混乱させてしまい申し訳ない」と謝罪をした後とあって、それ以上話す言葉もなかった。

先週末はひっきりなしにインターネットや政界、大学などで、サムスンの新しい採用制度は大学の序列化や地域差別、女性差別だという批判が続いた。世論の否定的な反応を予想できず事態を下手に処理してしまったのは超一流企業のサムスンらしくないという声もあった。サムスン内部からも「大学の序列化と映りかねない部分があった」という自省論が出てきた。

さまざまな視覚の中にも依然として残された“悩み”がある。韓国の大学と社会がサムスンの採用実験を何も考えずに拒否してしまったのではないか、行き過ぎた機械的平等主義に埋没しているのではないのかという点だ。全てのものが一度に原点に戻ってしまった。今年4月のサムスン上半期公開採用試験には、例年のように全国およそ100の試験場に韓国内の大卒者の20%を超えるおよそ10万人の青年が集まることだろう。サムスンがこの日1日のために払う費用は100億ウォン(約9億4600万円)に達する。塾街には「サムスン考試班」が今後も運営され続けるのは至極有り得る話だ。二浪三浪をしてでも“サムスンマン”になりたいという若者たちが「サムスン考試浪人」として学校と塾街を行き来するだろう。


批判の声の中で地域差別、いわゆる「湖南(ホナム)差別」は果たして妥当な主張なのだろうか。大学別の総長推薦人員は大学別の学生定員に比例して決まった。学生数にともなう差であって、地域差別ではなかった。サムスンは全体公開採用の35%を地方大から、5%を低所得層から選ぶ。湖南は他地域に比べて低所得層選抜比率が相対的に高い。「総長推薦撤回」のためにサムスンに電話をしたというカン・ウンテ光州(クァンジュ)市長がこのような内容を知らないはずはなかっただろう。

「女性冷遇」という非難も少し考えてみる部分がある。サムスンは定員の少なくとも30%を女性に割り当てている。女性差別に対する批判は、サムスンが必要とする理工大生が相対的に少ない女子大の気に障ったところから始まったことではないだろうか。

サムスンは28日に全面留保発表をしながら「学閥と地域を越える開かれた採用に対する研究検討は継続していきたい」と明らかにした。それほど遠くない期間内に合理的で社会的な合意を勝ち取れる、より良いアイディアを出すことができることを願う。そしてその時は社会的な議論も、より冷静かつ合理的に行われることを期待したい。

チェ・ジュノ経済部門記者



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