イラスト=キム・フェリョン記者
機関紙の編集局を訪ねると、「内務省から伝えられた内容」と弁明した。内務省は「ロンドンに駐在する秘密情報部員の報告書によるものだが、錯誤があったようだ」としながらも「訂正の記事を出すことはできない」と述べた。すぐに尾行がつき、電話が盗聴され始めた。エンジニアは悪夢に苦しみ、実際に亡命を試みることになった。
フランツ・カフカの小説『審判』で主人公ヨーゼフ・Kは、家を訪ねてきた「監視人」2人に理由も分からないまま逮捕され、尋問を受け、結局、殺害された。クンデラはチェコのエンジニアとヨーゼフ・Kの事例から共通点を発見した。罰を受ける者は自分がなぜ罰を受けるのか理由が分からない。罰がない罪を要求するためだ。本人は心の平穏を求めるために苦痛を合理化しようとする。自ら過ちを探して認めようとする。「罰が罪を探しだす」状態に陥るのだ。さらに「人々に自分が罪人であることを調べてほしいと懇請」する。
カフカ(1883-1924)は20世紀初めにすでに全体主義の社会像を予想したのだろうか。クンデラは1950年代、共産党の実力者だった詩人Aのケースも例に挙げる。スターリン式粛清対象になって逮捕されたAは監房で詩集を1冊書く。共産主義に対する忠誠を告白する詩だった。Aも罪がないのは同じだった。クンデラはAについて「彼が卑怯だったからではない。詩人は死刑執行人に対する忠誠が自分の徳性と正直性を表してくれると考えたのだ」と解釈する。
遠い国の見慣れない風景ではない。かつて北朝鮮も韓国戦争(朝鮮戦争)南侵失敗の責任を負わせ、李承ヨプ、朴憲永(パク・ホンヨン)を「米帝のスパイ」という罪で処刑した。裁判記録を信じるなら、彼らもスパイ行為自体は認めた。詩人Aと似た心境かもしれない。過酷な拷問と操作に加え、「勝てば忠臣、負ければ逆賊」という権力論理が、自暴自棄を呼んだ可能性がより大きい。顔・手にあざができ、襟首をつかまれながら法廷に入る張成沢(チャン・ソンテク)の姿が衝撃と錯雑な思いをもたらす。金正恩(キム・ジョンウン)推戴の時、「誠意なく拍手をしながら傲慢、不遜な行動」したという彼も“犯行”が100%立証され、全面的に認めたと、北朝鮮は主張する。カフカも歴史がこのように何度も繰り返されるとは予想できなかったはずだ。
ノ・ジェヒョン論説委員・文化専門記者
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