２８日午前、世宗路（セジョンロ）政府ソウル庁舎３階の統一部記者室は騒がしかった。朝鮮労働党統一戦線部が運営する北朝鮮の対南扇動サイト「わが民族同士」に上げられた書き込みのためだった。「わが民族同士」が１０カ所余りの韓国報道機関と１８人の記者の名前を名指しし威嚇と誹謗を浴びせた。一部メディアに対しては「客観性・公正性をすべて喪失し謀略とねつ造だけを業とする御用メディア・反動メディア」と主張した。

北朝鮮の非難文を読んだ記者の間で失笑が漏れ始めた。非難対象メディアと記者の名前すらまともに把握できないまま非難を浴びせていたためだ。ＳＢＳのＡ記者と世界日報のＢ記者らは名前が間違っていた。文化日報のＣ記者は世界日報記者に、チャンネルＡのＤ記者はテレビ朝鮮の所属に入れ替わっていた。記者らとともに非難対象に挙げた大学教授と北朝鮮専門家の名前も間違っていた。「南朝鮮言論問題研究院」という正体不明の職責と「チェ・ドゥクピル」という架空の人物まで出した。そうしておきながら「記者・専門家・教授・博士の仮面をかぶった悪質極右分子」と声を高めた。

北朝鮮は金泳三（キム・ヨンサム）政権時代に韓昇洲（ハン・スンジュ）外務部長官のプロフィールまで取り上げ「反北朝鮮人物」と非難に熱を上げたことがあった。北朝鮮が当時列挙した経歴には「春川（チュンチョン）で生まれ国会議員を務めた」とあった。春川出身の国会議員は韓昇洙（ハン・スンス）元首相のプロフィールだ。北朝鮮の対南機関である祖国平和統一委員会や情報機関が韓国の要人の名前さえ区別できないほどの実力を示したことになる。何年か前に北朝鮮は韓国側関係者に伝えてほしいとして自分たちが発送した扇動用の手紙を平壌（ピョンヤン）放送で宛先の名前とともに公開したことがある。当時韓国側人物の職責や住所が誤っており、北朝鮮の情報力に穴が開いているという指摘が出たこともある。


「わが民族同士」は韓国社会で「進歩的な言論活動は無惨に弾圧され傀儡保守言論だけがのさばっている」と主張した。だが、統一部記者室には進歩と保守を網羅する多様な指向の４４の新聞・放送・通信・インターネットなどのメディアが同じ空間で時に競争し、時に協力しながら取材している。「弾圧」も「のさばり」もない。北朝鮮のめちゃくちゃな誹謗直後に統一部記者団は「独善と悪口で埋められた非難・脅迫は断固拒否する」として遺憾を示す声明を出した。

金正恩（キム・ジョンウン）時代に入り北朝鮮の対南ラインはどたばたする様相を見せている。４月の開城（ケソン）工業団地閉鎖という自ら失敗を招く手法が代表的事例だ。北朝鮮の対南ラインが明確にわかれば良いと思う。事実関係すら間違った誹謗で得られるものは何もない。

イ・ヨンジョン政治国際部門記者