原則と実利の間でサッカー韓国代表の洪明甫（ホン・ミョンボ、４４）監督が悩んでいる。かつて“サッカー天才”と呼ばれたが、日々存在感が薄れている“問題ＦＷ”朴主永（パク・ジュヨン、２８、アーセナル）のためだ。

韓国は来月、Ａマッチ２試合を行う。世界最強のブラジル（１２日）、アフリカの強豪マリ（１５日）を相手に戦力をチェックする。海外組も招集する方針だが、朴主永を選抜すべきかどうかが大きな問題だ。

所属チームで出場機会を得られない朴主永を代表チームに呼べば、特別扱いという批判が出る可能性もある。「所属チームでの活躍が代表選抜の重要な基準」というのが洪監督の原則だった。しかし池東源（チ・ドンウォン、２２、サンダーランド）、金東ソプ（キム・ドンソプ、２４、城南）、趙東建（チョ・ドンゴン、２７、水原）など、これまで抜てきしたＦＷ選手が目を引くような活躍を見せられず、「やはり朴主永しかいない」という声も少なくない。


朴主永の墜落は激しい。２００４年Ｕ－１９（１９歳以下）アジア選手権の決勝で中国のＤＦ４人をもてあそびながらゴールネットを揺らした抜群の個人技に、ファンは「韓国サッカーに種子が違うＦＷが誕生した」と興奮した。０５年プロサッカーデビュー舞台で１８得点し、全員一致で新人王に選ばれた。０５年夏の０６ドイツワールドカップ（Ｗ杯）アジア最終予選のウズベキスタン戦では、終了間際に同点弾を決めた。Ａマッチデビュー戦、デビューゴールだった。

朴主永のサッカー人生がつまづき始めたのは２０１１年夏からだ。ＡＳモナコを離れ、フランスのリールへの移籍がほぼ確定していたところ、アーセナルの連絡を受け、行先地を変えた。結果的にこれが毒となった。イングランドプレミアリーグの名門球団に加わったが、ポジション争いで劣勢となった。移籍の過程で兵役逃れ疑惑まで浮上し、アンチファンも増えた。ワイルドカードで加わって銅メダルを獲得した昨年夏のロンドンオリンピック（五輪）が、笑顔に戻った短い期間だった。五輪後にスペインのセルタ・ビーゴにレンタルされ、再起を狙ったが、これも失敗に終わった。今年アーセナルに復帰したが、朴主永のための場所はほとんどない。

秋夕（チュソク、中秋）連休期間に英国に滞在する予定の洪監督は１９日または２０日にロンドンで朴主永に会い、話をする予定だ。車範根（チャ・ボムグン）元代表チーム監督は「私が水原の監督だった時代、ＦＣソウル戦で最も苦しめられた選手が朴主永だった。朴主永は代表チームを輝かせ、ファンに喜びを与えた選手。所属チームでプレーできなければ、代表チームでチャンスを与えて復活させるべき」と話した。

朴主永が代表チームのために献身するという覚悟を見せる場合、洪監督は朴主永にチャンスを与える可能性が高い。代表チームのある関係者は「洪監督が原則を重視するのは代表チームの競争力を高めるため」とし「朴主永の抜てきに関連し、どうすれば代表チームに有利になるか悩んでいると聞いている」と話した。