以前まで芸能人は路上キャスティングを通じてデビューするケースが多かった。最近は大手マネジメント会社の練習生制度と放送局の公開オーディション番組を通じてデビューする方法が一般化し、路上キャスティング神話はほとんど聞かれなくなった。

芸能界では消えつつある路上キャスティングが、最近では一般会社の人材採用に導入され、話題になっている。ある大手企業が新概念採用プロジェクトの一環として始める路上キャスティングは、学閥や語学の点数、各種資格などスペックの代わりに、性格を中心に新入社員を選ぶという意志が込められている。

人をひと目で見て判断することが果たして可能かとも思うが、全く不可能というわけでもなさそうだ。最近、若者の間で話題になっているウェブ漫画、ユン・テホ氏の「未生」を見ると、こういうセリフが出てくる。「コピーする間、遠くの山を眺める人がいる一方、その間にもそれを読もうとする人…コピーをさせるだけでも人が分かる」。小さなことに対する新入社員の態度を見ても、その人の性格や潜在力を把握できるという意味ではないだろうか。武侠映画で師が弟子に水を運ばせるなど雑用をさせながら、弟子の性格を把握するのと似ている。


最近、「創造経済」が話題になり、その動力といえる「創意的人材」に対する社会的な関心が大きく高まった。これと同時にクリエイティブ（創意性）が生命である広告産業が創造経済の核心ではないかという「気分のいい誤解（？）」も受けている。

長いあいだ広告業に従事しながら人材を発掘し、一緒に働いた経験を通じて悟った点は、創意性は「スペック」よりも自分だけの激しい人生を歩んできた「ストーリー」から出るということだ。もちろんまだ採用過程でスペックを見るケースが多く、求職者はスペックを築こうと努力している。しかし最近、多くの企業で「スペック」重視採用慣行が急速に減っている。自己紹介書だけで書類選考をし、志願書類から出身学校を削除するケースが増えている。

最近は「ウォーカーズ（Ｗａｌｋｅｒｓ）」という創造人材学校が設立されたりもした。ウォーカーズはスペック中心の採用システムで機会を得られなかった若者を創造人材として発掘し、養成する。教育課程を通じて就職や創業をするまで支援する教育機関だ。名前が「ウォーカーズ」というのもおもしろい。創造性は頭ではなく激しい人生の足跡をつくる「足」から出てくるという意味なのだろう。ウォーカーズは、人生を歩みながら挫折と失敗を含む、挑戦した経験が多い人の姿を人生マイレージで計測できるという。学閥とスペックの代わりに人生マイレージがたくさんたまった若者を学生として選抜するということだ。

「ランナーズハイ」という言葉がある。マラソンで苦痛を乗り越えて走った後に得られる歓喜を意味する言葉だ。この熱い夏、創意的人材になるために激しい人生マイレージを積み立てているすべての若者が「クリエイティブハイ」を経験することを望む。

ハン・ジョンソク・イノーションワールドワイド専務