米国のオバマ大統領１期目の外交政策で最も大きな業績は、いわゆる「アジア（と太平洋）への中心軸移動」だ。オバマ大統領は２０１１年１１月１７日、豪州議会演説で「私たちがこの地域に新しく関心を集中させるのは、一つの根本的な真実を反映している。それは米国が太平洋国家ということだ。今までも常にそうだったし、今後いつまでもそうだ」と述べた。その後、「大統領として私は熟慮した末、戦略的な決定をした。太平洋国家として米国はこの地域の現在と未来を築いていくうえで、より大きく長期的な役割をすることになるだろう。核心原則を守っていくことで、そして同盟国および友邦と緊密な協力を維持していきながら、そうしていく」と話した。

しかしワシントンと議会にいる多くの人たちは、こうした中心軸の移動がオバマ政権２期目では消えたのではないかと心配している。こうした憂慮にはいくつか理由がある。まず、ヒラリー・クリントン国務長官から退いたという点だ。クリントン長官は当初、アジアとは距離がある人物だったが、この地域の成長潜在力が最も大きく、未来の国際関係で最も重要だという事実を正確に把握した。これは彼女の能力のためでもあり、カート・キャンベル次官補と親しかったためでもある。実際、クリントン国務長官の最初の海外訪問地は日本だった（米国史上初めて）。

筆者はかつてホワイトハウスの参謀として国務長官らに随行してアジアを訪問し、さまざまなイシューを扱った発言の要点の草案を作った。したがって核心人物のブリーフィングや質疑応答で、その人がすべてのニュアンスを理解しているかどうかを把握できる。クリントン長官はこの問題について、いつも“絶対音感”だったし、自分が中心軸の移動を信じていることをアジアのすべての人々に信じさせた。クリントン長官の次に席を離れた人は、彼女の先頭斥候兵だったキャンベル次官補だった。ワシントンで「アジアグループ」という新生会社を運営するためだった。キャンベル次官補が離れたのは２月８日だった。その後、この席は５カ月間空席だ。有能な外交官のジョセフ・ユン氏が代行を引き受けたが、２期目はこの席に外交政策を遂行する政治的な人物を別に必要としている。ホワイトハウス補佐官のダニエル・ラッセル氏がその席に就く予定だったが、テッド・クルーズ上院議員の反対で任命が遅れている。彼は最高の専門性と能力を持つが、上院の承認が遅れているため、アジアへの中心軸移動が動力を失うのではという懸念をもたらしている。


先月末にはトム・ドニロン大統領補佐官（国家安全保障担当）が離れた。彼はクリントン長官の辞任後、アジアへの中心軸移動に動力を提供してきた核心人物だった。実際アジア政策に関するホワイトハウスの発表のほとんどは彼から出てきたものだった。彼はオバマ大統領と習近平中国国家主席のサニーランズ首脳会談を準備するのに核心的な役割をし、アジア協会の２０１３年政策業績賞を受けた。



【コラム】オバマ大統領の「アジア中心政策」は消えたのか（２）