「これから自分の名前に『選手』という言葉を付けられなくなった。 これまでの皆さんの大きな声援に感謝しています」。韓国プロ野球のレジェンド、李鍾範（イ・ジョンボム、４２、元起亜タイガース）の声は震えた。 万感が胸に迫るように重い表情でうつむいていた。 こらえていた涙は家族の話をしたところで流れた。 ５日、ソウル清潭洞（チョンダムドン）リベラホテルで開かれた公式引退記者会見だ。

李鍾範は優れた野球センスで‘野球の天才’と呼ばれた。 １９９３年に起亜の前身ヘッテでデビューした李鍾範は１６シーズンで１７０６試合に出場し、打率２割９分７厘、１７９７安打、７３０打点、５１０盗塁を記録した‘最高の１番打者’だった。 韓国シリーズ最優秀選手（ＭＶＰ）を２回、ゴールドグラブを６回（遊撃手４回、外野手２回）獲得した。 シーズン最多安打（１９６本）と最多盗塁（８４個、ともに１９９４年）記録も持つ。

しかし本人は「努力」をその原動力に選んだ。 「他の選手より体格やパワーがあったわけではなかった」と自評した李鍾範は「私が今まで後輩と競争できたのは努力のためだった。 ４打数４安打に満足してはいけない。 絶えず発展して成長するために努力しなければいけない」と後輩に助言した。


李鍾範は新人だった９３年の韓国シリーズ優勝、また０６年第１回ワールド・ベースボール・クラシック（ＷＢＣ）第２ラウンドの日本戦で二塁打を放ったことが最高の瞬間だったと明らかにした。 一方、中日時代に死球でひじを負傷したこと、韓国で顔に死球を受けたことが、最もつらい記憶として残っていると語った。

野球で社会について学んだという李鍾範は、生涯を野球と一緒に歩んでいくとファンに約束した。 李鍾範は「３４年間ずっと野球だけをしてきた。 野球しか知らない。 先輩たちの失敗の経験から事業は絶対にしない」と話した。 続いて「韓国プロ野球のためにできることを選択する。 選手とコーチの気持ちを深く理解できる人間味ある指導者として残れるように努力する。 いつかタイガースのユニホームを着て皆さんに会える日が来るのを待ちたい」と話し、指導者の道を進む可能性を示唆した。

引退記者会見の途中、「ハリウッドスターになったようだ」と冗談を言っていた李鍾範も、家族の話ではこらえていた涙を流した。 李鍾範は「きつい時、家族がいたから大きな力になった。大切な家族のおかげで幸せだった」とし「シーズン最多盗塁記録を息子のジョンフに破ってほしい」と語った。 ジョンフ君は光州（クァンジュ）の中学校で内野手をしている。

記者会見が終わると、李鍾範は「サランハムニダ（愛しています）」と言いながら膝をついて頭を下げた。 選手・李鍾範に決別を告げる最後のあいさつだった。