離岸流(矢印)の様子。海岸(右上)の一定地点から速いスピードで潮が深い所に流れ込んでいる。
“デビルズ島”は、四方が絶壁と波でふさがれていた。何度も脱獄を企て、結局この島に閉じこめられてしまったパピヨン(スティーブ・マックイーン扮)だが、荒々しく岩にぶつかるすさまじい波を見ながらも希望を捨てなかった。彼は遂に波のサイクルをつかむことに成功する。島側に激しく押し寄せた波が決まった周期で一度ずつ海のほうに押し流されていくのを目撃したのだ。パピヨンは椰子の実を胸に抱いて絶壁から飛び降りた。そしてついに脱出に成功する。映画「パピヨン」の中でも、とりわけ名場面とされているこのヤマ場で、劇的なシナリオの完成度に決定的な役割を果たしているのがこの離岸流だ。
しかし現実で離岸流はハッピーエンドよりは悲劇を生む。代表的な事例が1955年7月28日、日本・三重県津市の中河原海岸で起きた水難事件だ。事故当日の午前10時頃、水泳の授業を受けようと浅瀬に立っていた橋北中学校の女子生徒200人のうち100人ほどが急に波にさらわれ次々と海の中に飲み込まれていった。教授や水泳部員が懸命の救助にあたったが36人が亡くなった。この海辺は遠浅の砂浜だったが、陸地から小さな川が流れ込んで海の下にくぼみができ、このくぼみを通じて潮が外に流れ出たのが原因だった。
海雲台海水浴客を一瞬で海に連れ去る“パピヨンの波”の正体は(2)
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