‘メディア王’ルパート・マードックがメディア帝国を築くために選択した戦略は露骨な扇情主義だった。 豪州出身のマードックは１９６９年、英国の平凡な新聞だった「サン（Ｓｕｎ）」を買収した後、大衆の窃視症と野合する。 それで作ったのが大衆紙の表象になった「ページスリーガール（Ｐａｇｅ　３　ｇｉｒｌ）」だ。 サンは最初のページの次に注目度が高い３ページ目に毎日、胸を露出した女性モデルの写真を大きく載せた。 保守層は度が過ぎる「イエロージャーナリズム（Ｙｅｌｌｏｗ　Ｊｏｕｒｎａｌｉｓｍ）」だと騒いだ。 ある議員は議会でサンを揺さぶりながら「すぐに処罰すべきだ」と興奮した。

しかしマードックは全く動じなかった。 むしろ１年後にはトップレスの写真を掲載し始めた。 あふれる非難にも堂々と言い返した。 「ガムを売ろうと、テレビを売ろうと、誰でも誇張する。重要なのはいかにたくさん売るかだ」と。 部数は爆発的に増え、年間５００万ドル以上の赤字だったサンは黒字に転換した。 英国の競争紙はもちろん、世界２０余りの大衆紙が一斉にサンを真似た。 イエロージャーナリズムの優等生サンの完壁な勝利だった。


スキャンダル、セックススキャンダル中心の扇情的な報道を意味する「イエロージャーナリズム」は、１９世紀末の米ニューヨークの新聞戦争に由来する。 １８８９年当時、メディア財閥ウィリアム・ハーストのニューヨークジャーナルは、競争紙ニューヨークワールドの漫画「イエローキッド（Ｔｈｅ　Ｙｅｌｌｏｗ　Ｋｉｄ）」が人気を集めると、作家をスカウトした。 すると、ジョーゼフ・ピューリツァーが経営するニューヨークワールドは他の作家に同じ漫画を描かせた。 両紙で「イエローキッド」が同時に掲載されるおかしなことになったのだ。 これをきっかけに両紙は激しい扇情主義競争を繰り広げ、イエロージャーナリズムという新造語を作りだした。


最近までイエロージャーナリズムの最高峰はマードック所有の英国週刊紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」だった。 同紙は姉妹紙のサン以上に刺激的な記事を掲載し、株価を上げた。 そのおかげで一時は９００万部という世界最大発行部数を誇ったりもした。

その新聞が最近、電話を盗聴した事実が明らかになり、１１日、１６８年ぶりに廃刊することになった。 いくらイエローペーパーとはいえ違法な盗聴は許さない英国社会の雰囲気のためだ。 最近、国内のある放送局も盗聴疑惑に包まれている。 真相は見守らなければならないが、イエローペーパーでもない正統メディアが本当にそうならば、過酷な批判は免れないだろう。

南楨鎬（ナム・ジョンホ）国際選任記者