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【グローバルアイ】水俣と福島

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
数年前、熊本県水俣市に出張した。私たちには水俣病でよく知られているところだ。100年前ここにできた化学会社「チッソ」の工場は1950年代、水銀が含まれた工場廃水を川と海に流してしまった。水銀に汚染した魚介類を食べた人と動物は、四肢のしびれや精神錯乱を起こして死亡していった。水俣病が確認されて今年で55年になる。

記者が訪問した水俣市は平和な漁村だった。水銀に汚染したスラッジは除去され、長年にわたって禁止された釣りと操業も再開された。水質調査の結果、今では日本でも有数のきれいな海水を誇る水俣は、今まで偏見と差別を経験してきた。

チェックインするため海辺にある5階建てのホテルに入った。アニメーション「千と千尋の神隠し」の旅館を連想させる建物、日本で最も長い洞窟温泉があるという案内文に引かれて予約したところだった。ところがホテルの入口にある宿泊客歓迎名簿には私の名前一つしかなかった。職員の案内を受けて部屋へ向かう途中、90年代に韓国で人気を呼んだ歌が流れていた。「これは韓国の歌謡曲のようですが…ひょっとして今日の宿泊客は私一人でしょうか」。20代前半の若い女性職員は親切な笑顔でうなずいた。「韓国のお客様がいらっしゃった場合は、歓迎の意を込めて韓国の音楽をかけています。私ども全職員は今日、お客様一人に最善を尽くしてお迎えします」。


突然怖くなってきた。70以上の客室に宿泊客は私ひとり。なぜか監視を受けているような感じで、ゴミも捨てるのもためらった。10メートル余りの温泉洞窟はなぜこんなに長くて暗いのか…。翌日チェックアウトする時、職員の説明によると、外地の人たちにはまだ「水俣病」というイメージが残っているという。「水俣で獲れた魚は安心して食べられるのか」という予約客の確認電話がかかってくることもあるという。

川と海の水銀汚染と放射線汚染という差はあるが、最近の福島は同じ境遇にある。3月に東京電力福島第1原発事故が発生して以来、福島は捨てられた地になりつつある。宮城県や岩手県など他の被害地域には全国からボランティアメンバーが集まっているが、福島に向かう足は途絶えている。しばらくは宅配会社も福島には入ろうとしない。日々深刻になる土壌・水質汚染が世の中に知られながら、全国コメ生産量4位の福島の農業も崩壊危機に直面している。市民団体と各機関は福島の農・蓄・水産物を積極的に購入しようという運動を繰り広げている。政府は福島など東北地域につながる高速道路の無償化を推進、地方自治体の観光客誘致を支援し始めている。一方では10万人余りの福島住民が故郷を離れ、10年になるか20年になるかも分からない避難生活を始めている。「水俣」と「福島」は世界で最も成功的に産業化を成し遂げた経済大国・日本につけられた暗い名前だ。



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