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【グローバルアイ】先覚者と指導者

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
「当選者様。私が折り入って差し上げる建議があります。これは多分大韓民国しかできないことです」。

1998年2月9日、ソウル・汝矣島(ヨイド)の国民会議総裁室。政治部記者時代だった。当時41歳の孫正義ソフトバンク社長が次期大統領に当選した金大中(キム・デジュン)氏にいきなり話を切り出した。「何ですか」。

孫社長の提案は超高速インターネット通信網を3年間全国民に無料で開放しようというものだった。韓国の若者たちが先を争ってベンチャーと革新的創業をできるようにしようとの趣旨だ。金氏が問い直した。「無料ですれば事業者は何が残るのか」。孫社長は待っていたかのように説明を続けた。「それを国家政策としてするのです。政府が一定予算を策定して事業者に無利子で融資し、3年後にサービスを有料化して事業者に利益が出れば返済を受ければいいのです。最近のようにインターネット情報通信網使用料が高ければ若いベンチャー事業家は座り込んでしまいます。3年間思う存分使えるようにすれば考えることもできなかった産業が次から次へと生まれるでしょう。世界のどの国もこれをできません。これを韓国が最初にしてこそ米国・日本に追いつき情報化革命を成し遂げる先頭国家になります」。


じっくりと考えに浸った金総裁に孫社長は、「私はソフトウェア業者です。この構想に利害関係はありません。政府の負担もなく知恵と政策だけでできることです。実はこの考えを日本でも10年前から主張しているが日本の首相はしばしば変わり会ってくれることもせず、リーダーシップもありません」。

金氏はそばにいた鄭鎬宣(チョン・ホソン)議員を示し、「あの人は特許が103件にもなります。よく話してみて下さい」。孫社長の提案は結局水の泡となった。

歳月が流れ韓国はIT大国になった。だが、当時の孫社長の提案が現実化されたなら「iPhone」や「iPad」のような挑戦的な結果が韓国で最初に誕生しなかっただろうかと想像してみる。いくら偉大な先覚者もそれを受け入れて消化する指導者の後押し、リーダーシップがなければ空しくなるものだ。靴磨きに運び屋がいくら靴を持っていっても靴磨きがきれいにつやを出さない限り靴磨きの事業が成立しない道理と同じだ。そうした点で孫社長は不運だった。

不運は続くものだろうか。最近日本の政界の動きを見ながらそのような気がしている。東日本大震災と福島第一原発事故後、孫社長は大規模な太陽光発電所(メガソーラー)建設計画を最初に提案した。多くの地方自治体が同調した。菅直人首相も興味を持って積極的推進を約束した。

だが、すぐにめちゃくちゃになった。日本の指導者の菅首相は不信任案通過の窮地に追い込まれるとすぐに退陣するかのように煙幕を張り、「そのようなことはない」と急変するなど「政治サーカス」の真髄を見せている。そうしたところで数カ月延命できるだけだろう。先覚者孫正義の構想もまた水の泡になる公算が大きくなった。「首相がしばしば変わりリーダーシップもない…」という13年前の孫正義の愚痴はいつまで再放送されなければならないのか。

キム・ヒョンギ東京特派員



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