父は息子の右手を強く握った。 声なく涙が流れた。 息子も父の手を握り返した。 父子はこうして心を交わした。 息子は父の涙を拭きながら背中を擦った。 ２２日午後２時、ソウル峨山（アサン）病院西館１０階の肝移植病棟。 父ハ・チャンギルさん（６０、全羅南道光陽）は「すまない」という言葉を何度も繰り返した。 妻ホン・ヨンスクさん（５５）が「泣かなくてもいい」と言いながら夫を励ました。 息子サンチョル（２６、会社員）は「たくさん食べて早く回復し、健康に長生きしてほしい」と伝えた。

ハさんの父子は１１日、並んで手術を受けた。 アルコール性肝障害の父の肝臓を取り出し、息子は肝臓の７０％を父に提供した。


ハさんは２０年間、ほぼ毎日焼酎２本を飲んだ。 ５年前の健康検診の警告も無視した。 先月、腹水がたまり、呼吸がしにくくなった。 政府が決めた待機順番に合わせて肝移植を申請しようとすると、息子のサンチョルさんが自分が提供すると言い出した。


韓国にはサンチョルさんのように親に肝臓の一部を提供する親孝行が多い。 昨年は４９５人だった。 こうした孝心のためか、韓国の生体肝移植が最も多いという。

２３日に保健福祉部（福祉部）が世界保健機関（ＷＨＯ）の臓器移植資料（０８年）を分析した結果、人口１００万人当たりの生体肝移植件数は韓国が１３．６４件で、世界９６カ国のうち最も多かった。 ２位のシンガポール（７．３３件）の約２倍にのぼる。 子が親に肝臓を提供するケースが最も多い。 昨年の生体肝移植８４４件のうち４９５件（５８．６％）がそうだ。 兄弟姉妹、夫婦間の寄贈が後に続いた。

韓国がこの分野で世界最高になるまでには優秀な医療技術も一役買った。 単一病院ではソウル峨山病院が年間３００件で世界で最も多くの肝移植をしている。 ソウル峨山病院の李承奎（イ・スンギュ）教授とソウル大病院の徐敬錫（ソ・ギョンソク）教授から医術を学びに来る外国人医師が列をなす。

◇生体肝移植＝生きている人の肝臓の一部を切り取って患者に移植する技術。 肝臓の３０％以上を残せば３カ月以内に元の大きさに戻る。 移植を受けた人も同じ。 血液型が同じならよいが、そうでなくても問題はない。



【今日のイチオシ記事】
・中国の楊外相「韓日防衛協力知っている」…懸念の表明か
・【コラム】崩壊する日本民主党と独島
・恐怖のリビア脱出記...６７時間で２３００キロを走った
・文化部長官「日本ドラマを開放する時期」
・北朝鮮でも“ジャスミン”漂う…住民の暴動デモ相次ぐ