北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の二男・金正哲(キム・ジョンチョル)が最近、シンガポールを訪問し、10日間ほど豪華遊覧を楽しんだという。数十人の随行員と一緒に一流ホテルに宿泊、高価なダイヤモンドを購入し、ロック歌手エリック・クラプトンの公演をVIP席で楽しんだ。また中国やマカオなどに滞在しながら豪華生活をする長男・金正男(キム・ジョンナム)については、すでに広く知られている。長い間の経済難と食糧難で食事もできずに苦しむ北朝鮮住民の惨状を見れば、金正日‘ロイヤルファミリー’の豪華生活は理解しがたい。さらに北朝鮮は貧富の格差を許さないという社会主義国家ではないのか。金正日ロイヤルファミリーは、北朝鮮の社会主義体制が少数特権層の利益のために大多数の住民の膏血を絞る歪曲された体制であることを端的に見せている。
特に金正哲の外遊はいわゆる「民族最大の祝日」とされる金正日国防委員長の誕生日(2月16日)を控えた14日まで続いた。これと関連し、三男・金正恩が後継者に内定し、兄の金正哲が政治に一切介入していないことを意図的に見せるための動きという解釈がある。あたかも歴史ドラマに出てくる中世王朝国家の王位継承過程を見ているようだ。同時にロイヤルファミリーの金正哲が国家最大行事を目の前にして外遊する状況は、北朝鮮権力体制のネジが緩んでいるという印象までも与える。後継者になった弟を意識しなければならない兄の金正哲と金正男の海外豪華生活は、北朝鮮体制と統治システムの矛盾を赤裸々に表している。
北朝鮮は最近、世界中に食糧支援を求めているという。「北朝鮮が食糧支援を要求していない国や国際機構を見つけるほうが早いほど」と言われる。こうした危機状況にもかかわらず、ロイヤルファミリーをはじめとする特権層は全く気にしていない。腐敗した独裁国家の典型的な姿だ。特に北朝鮮は神格化された金正日国防委員長がすべての権力を独占している。金委員長は海外から高級乗用車など高価品を買ってきて、周辺の家臣に‘下賜’する形で自身の権力基盤を維持している。自分に忠誠をつくす人々には、先進化された民主国家の高位公職者さえも考えられないほどの豪華生活を約束する形だ。このため外交官までが密輸など違法活動で外貨稼ぎをし、「統治資金」として金正日委員長に捧げているという。
北朝鮮は1、2年前から国家合営投資委員会や大豊(デプン)グループなどを作り、外資の誘致に積極的に乗り出していることは、しばしば報道されている。しかし成果はほとんどないという。少数特権層の腐敗したぜいたく生活のため貴重な外貨を浪費する北朝鮮に投資する外国企業や機関、政府が果たしてどれほどあるだろうか。二律背反の北朝鮮の状況にはただ苦い思いをさせられるだけだ。
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