エジプトの反政府デモが国際社会の焦眉の関心事に浮上した。30年間という長期執権中のムバラク大統領の退陣と民主化を求めるエジプト市民の大規模デモが今日で8日目を迎えている。昨年末に北アフリカのチュニジアで始まった市民革命の火がエジプトに広がり、イエメンからスーダン、アルジェリアからヨルダンまでアラブ圏全体が揺れている。チュニジアのアリー大統領の23年の鉄拳統治が「ジャスミン革命」で崩れたのに続き、ムバラク政権までが崩壊すれば、その波紋は非常に大きくなる。第2次世界大戦後維持されてきた中東秩序の根本的変化が避けられなくなり、国際政治と国際経済にも大きな影響を及ぼすとみられる。
いまムバラク大統領は岐路に立っている。ムバラク大統領の選択しだいで、エジプトは平和な政権交代を通して民主化の道に入る可能性もあるが、大規模な流血鎮圧という悲劇的な結末に終わることも考えられる。たまった水が一気にあふれ出るようなエジプト市民の怒りは、一時的な民心収拾策で克服できる限界を越えたとみられる。暴圧的な長期独裁と腐敗、人権弾圧と生活苦による不満が、ムバラク大統領を正面から狙っている。民心を謙虚に受け入れ、全面的な政治改革に着手した後、自ら退くのがムバラク大統領としては最善の選択になるだろう。今回の事態で中立を守っている軍首脳部も、ムバラク大統領の名誉ある退陣を勧めているだけに、手遅れになる前に決断を下すのが自身やエジプトのための賢明な選択だと考えられる。
アラブ圏の盟主として、米国の中東政策を支える役割をしてきたエジプトが、民主化革命に成功した場合、中東とアフリカのイスラム圏全体が大きな影響を受けるしかない。アラブ圏と民主主義は両立不可という西欧式オリエンタリズムの固定観念が崩れ、アラブ圏全体が地殻変動に直面する可能性が高い。1979年にイスラエルと修交して以来、エジプトはイスラエル-パレスチナ紛争に仲裁者として深く関与する一方、イスラム原理主義国家のイランに対抗し、イスラム極端主義の拡散を防ぐ役割もしてきた。米国はムバラクの権威主義的な長期政権を黙認しながら、中東秩序を維持する戦略的カードとして活用してきた。
しかし今回の事態で、米国は民主主義と人権という普遍的価値に立脚したアラブ圏の秩序ある民主化を促しながらも、イスラム極端主義勢力の執権は防がなければならないという難しい状況になった。エジプト事態によるアラブ圏の不確実性は国際原油価格と金融市場にすでに影響を及ぼしている。民主化の流れにもかかわらず、その間、民主主義の例外地域として残っていたアラブ圏で吹いている自発的な市民革命の風は世界史的な意味を帯びている。公権力はもちろんでデモに加わった市民も、できるだけ暴力を自制することで、平和的な民主化の路程を始められることを期待する。
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