北朝鮮が延坪島(ヨンピョンド)を攻撃した背景には、西海5島を無人島にしようとする高度な策略もある。戦争の恐怖に震える住民たちが延坪島から大挙離脱して軍兵力だけが駐留する島になる場合、北朝鮮がいつでも砲撃挑発を敢行する道を開くだろう。その上、北朝鮮が公然と主張してきた北方限界線(NLL)の無力化が達成され、西海5島周辺水域は紛争地域になる公算が大きい。小延坪島・ペクリョン島・大青島(テチョンド)・小青島(ソチョンド)の住民脱出ドミノは時間の問題となる。最終的には仁川(インチョン)港・仁川空港だけでなく首都圏が北朝鮮の影響圏に置かれることになりかねない。本当に悪夢のようなシナリオだ。
こうした兆しは砲撃挑発以後実際に現れている。直接被害を受けた延坪島住民1360人余りのうち本土に離れた1000人余りはまだ島に帰還しないでいる。政府に対する不信が大きくなり一部住民は“完全移住”を要求している。安全が担保されない限り延坪島に戻って生きていく自信がないと訴える。問題は延坪島だけで終わらないという点だ。西海5島の残る島の住民のうち一部は砲撃挑発以後相次いで島を離れている。
住民不安の要諦は北朝鮮の軍事的脅威だ。無人島化を防止しようとするなら一次的には軍の戦力増強が優先されなければならないということは言うまでもない。平和と身辺の安全が保障された後に生業に従事できるはずだ。だれが自身の故郷に背を向けて離れたいだろうか。だが、ここで終わっては不十分だ。住民たちが安心して暮らせる環境を作らなければならない。きのう発表された「西海5島総合発展計画」はその始まりにすぎない。ここには延坪島住民たちの人的・物的被害回復のために300億ウォンを緊急支援するという内容が盛り込まれた。住民待避施設の強化と定住生活支援金支給、ワタリガニ漁の弾力的運営など所得増大案を入れた「西海5島総合発展計画」も出てきた。金滉植(キム・ファンシク)首相は、「政府は西海5島を国土の第一線で大韓民国の平和と繁栄を守る島にしていく」と述べた。虚言になっては決してならない。国会も議論中の「西海5島支援特別法」を早く通過させ、これにこたえなくてはならない。
西海5島はいま運命の岐路に立っている。無人島になるか、イシモチとワタリガニがあふれる以前の島に戻るか、ひいては住民たちが豊かに生きる姿を全世界に見せる安保・生態観光地に変貌するかとの分かれ道だ。住民の有無は軍事的・領土的側面で意味は天と地の差だ。外地に避難した大多数の延坪島住民もいまは政府と葛藤を生じさせているが、島に残っている住民たちのように故郷を守ろうとする心だけはあるだろう。政府も関連法履行に支障がないようにしなければならないが、彼らも政府に対するむなしさ振り払い、毅然とした姿勢を見せることを期待する。北朝鮮の脅迫と恐喝に屈服して“国民のいない領土”として放置するならば西海5島はこれ以上私たちのものでない。少しも譲歩できない戦略的要衝地という点を韓国の国民すべてが格別に認識する必要がある。
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