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【時論】スーパーバクテリアが与える警告

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
 最近、日本のある病院で「スーパーバクテリア」による大規模な医療関連感染が発生した。 これまで58人の患者が感染し、9人が死亡したという。 感染が隣国の日本で発生したため、韓国でも発生するのではないかと多くの人が心配している。

スーパーバクテリアという言葉は学術用語ではない。 「人食い(flesh eating)」バクテリアをこのように呼んだメディアが、毒性が非常に強い菌も、抗生剤耐性が優れた菌もスーパーバクテリアと呼んでいる。 しかし最近の学界では、こうした菌をスーパーバクテリアという代わりに、さまざまな抗生剤に耐性を持つ細菌という意味で「多剤耐性菌」と呼ぶ。 地球上に存在するすべての抗生剤が効かない、本当の意味でのスーパーバクテリアは存在しないからだ。

今回問題を起こした菌は多剤耐性「アシネトバクター」菌だ。 この菌は土や河川に生息し、健康な人には問題のない毒性が弱い菌だ。 しかし集中治療室に入院するほど免疫力が落ちた人に侵入すれば病気を引き起こすおそれがある。 この多剤耐性菌は25年前に英国で発見され、1990年代に入って米国の複数の病院で集団的に患者が発生し始めた。 私たちも例外ではない。


細菌が環境に適応する能力は想像を超越する。 90度を超える温泉水にも、圧力が大きい深海にも、酸素が全くないところにも生息する。 こうした細菌が抗生剤を克服することなど何でもない。 これまで人類が開発した抗生剤のうち耐性菌が現れていないものは一つもない。 抗生剤を使用しない病院があったとすれば知らないが、耐性菌がない病院などはこの世に存在しない。 かといって病院が対応無策ということではない。 抗生剤の使用量を減らせば耐性菌の出現時期をもっと遅らせることができる。 このため風邪の患者に抗生剤を処方せず、手術感染の予防目的で投与する抗生剤の使用期間を減らさなければならない。 病院に耐性菌が出現しているかどうかを監視し、耐性菌拡散を遮断できる隔離施設も備えなければならない。 院内感染を管理できる専門医療関係者も確保する必要がある。

しかし韓国の健康保険は医療関連感染管理、特に感染予防には非常に脆弱だ。 感染が発生し、これに使った抗生剤の価格は認めるが、医療関連感染予防に必需品である消毒剤の購入費は認めないというようにだ。 日本の国民とメディアが注目している点は菌自体ではない。 いったい何が問題で耐性菌の出現事実を数カ月間も把握できず、事実認知後の拡散を防げなかった理由は何か、事実把握後の申告まで数カ月がかかった理由などを問うている。

抗生剤は人類最大の発明品の一つであり、人類の大切な資産だ。 この貴重な資産を次世代に譲るために、私たちは抗生剤の誤用・乱用を防ぎ、院内感染を徹底的に管理しなければならない。 幸い、まだ私たちには多剤耐性菌を殺せる抗生剤が残っている。 しかし私たちが今回の事件の教訓をきちんと読み取れなければ、残りの抗生剤も効かない本当のスーパーバクテリアが出現し、私たちの未来を脅かすだろう。

呉明燉(オ・ミョンドン)ソウル大医大教授・大韓感染学会理事長





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