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良い意図が必ず良い結果を保障するものではない。1990年代初め、化粧品会社ザ・ボディショップ(The Body Shop)がアフリカ・ガーナ産シアバター(クリーム・ローションなどの原料)を市価よりもっと高く買ったのもそうだった。当時、この会社が広げた「援助ではない貿易」(Trade not Aid)キャンペーンの一環だった。富裕な先進国消費者たちが後進国の品物を高い価格で買い受け、貧困撲滅の一助になろうとした。
しかし善意がもたらした後遺症はさんたんたるものだった。シアバターブームで1年に2トンほどの生産量が20トンに増えた。最初の会社側注文量の4倍にもなった。高い価格を多くの需要の信号だと勘違いした農民たちは、大事な時間と努力をむだ使いしたのだった(ジョーゼフ・ヒース『資本主義を疑う人々のための経済学』)。
貧しいコーヒー農家を助けようと登場した「フェアトレード・コーヒー」(公正貿易コーヒー=Fair Trade Coffee)運動も、ともすれば誤った信号になり得る。この運動が力をもち始めたのはコーヒー価格が1ポンドが3ドルから50セント以下に急落した2000年代の初め。公正貿易擁護論者たちは生産者たちに高い値段を支払って価格下落を止めようと主張した。しかし“凍った足に小便をする”にすぎないだけだ。
そのころ全世界コーヒー豆の需要は年間1億500万袋(1袋=60キロ)。それより供給が1000万袋も過剰なのが根本的な原因だったからだ。生産を大幅に減らさなければならないときに値段を高くつけるのは逆インセンティブだ。こうした間違いを認識した救護団体オックスファム(Oxfam)が率直な提案をした。「先進国でお金(約1億ドル)を出してコーヒー500万袋を買って廃棄してしまおう!」
今秋、コメの大暴落を阻むために韓国政府が過剰供給された新米114万トンを買い受けるという話だ。急な火は消せるかもしれないが、これからがもっと心配だ。国民1人が1年にコメ1俵さえ食べなくなって久しく、毎年在庫がどんどん積もるからだ。幸いにコーヒーは最近、中国、インドなどの消費増加、気候変化による生産減少で価格が上向きになっているという。結局、コメ問題も需要が増えるか、生産が減れば解けることだ。しかし育てておくだけで無条件政府が買ってくれる現構造では生産の減る隙がない。こんなにずっとでたらめな信号を送って、いつか“オックスファム式解法”でも使わなければならない日が来ないかと恐ろしくなる。
シン・イェリ論説委員
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