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【噴水台】死者の名誉

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
 無名だった金辰明(キム・ジンミョン)氏を一躍ベストセラー作家にした小説『ムクゲ花が咲きました』は、1993年に初めて出版されると、すぐに訴訟に巻き込まれた。 77年6月に米国で交通事故で他界した世界的な物理学者、李輝昭(イ・フィソ)博士に対する「死者名誉棄損」問題だった。 李博士をモデルにした小説は、韓国が生んだ天才核物理学者、‘イ・ヨンフ博士’が祖国に帰り、70年代、核開発の途中に疑問の死を迎える陰謀の過程を描いている。 しかし李博士の遺族は「博士の人生を実際とは著しく異なる形で表現し、人格権を侵害した」とし、出版および販売禁止仮処分申請を出した。 「がりがりとやつれた、メガネをかけた雑魚みたいな奴」という李博士に対する侮蔑的な人物描写、「サムウォン閣のシン・ユンミ」という女性との不適切な関係などの部分を取り上げた。 しかし当時裁判所は「李輝昭博士の名誉を傷つける意思はなかった」と判断し、ベストセラーの道を開いた。

死者名誉棄損罪は死者にも生者と同じく人格権があるという法哲学に基づく。 生者が死者に対して「公然と虚偽の事実を摘示した場合」(刑法308条)成立する。 法曹界では「生前の人間は死後にも社会的評価が歪曲されたり名誉が傷つけられたりしないと信じ、こうした信頼は人間の尊厳と価値を永続的に保障するために保護されるべき」と解釈する。 「柳寛順(ユ・クァンスン)は女チンピラ」という表現をした作家に死者名誉棄損罪を適用して有罪を宣告したのが、こうした事例の一つだ。 死んだ諸葛孔明が生きた司馬仲達に勝ったのと似ている。

それでも芸術創作の分野では表現の自由を幅広く認める趨勢だ。 今年4月、最高裁判所はKBS(韓国放送公社)大河ドラマ「ソウル1945」で李承晩(イ・スンマン)元大統領と張沢相(チャン・テクサン)元総理を親日派として描き、死者名誉棄損容疑で起訴されたプロデューサーと作家に無罪を確定した。 「故意性がない」という理由だった。


故盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領が死者名誉棄損事件でまたも世人の関心事の圏内に入った。 「根拠のない内容で元大統領を公然と陵蔑し、死に対しても罵った」というのが趙顕五(チョ・ヒョンオ)警察庁長候補者を相手取った遺族の告訴内容だ。 事件の核心は盧前大統領の借名口座の有無に集まっている。 ここで真実は一つしかない。 その結果は大統領の趙候補者選択に影響を及ぼすか、そうでなければ借名口座という新しいパンドラの箱が登場する諸刃の剣になるだろう。

高大勲(コ・デフン)論説委員



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