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李明博大統領が8・15の祝辞で統一税の論議を提案した後、南北統一案をめぐる論議が熱くなっている。論議の焦点は2つだ。第一、統一費用はどれだけで国民の負担はどれだけになるものなのかといった具体的な費用の問題だ。第二、統一税の論議が北朝鮮の崩壊の可能性を念頭に置いたものと吸収統一を推進しようとする意図ではないかという疑問だ。しかし統一税提案の本質は今すぐ税金を集めて吸収統一を準備するということだというよりは、急変する統一環境にもかかわらず、統一について既存の論議構造から脱することができないという問題認識を反映したものだと見られる。
既存の統一論議とは事実上、統一よりは分断を管理するものだった。法的な統一よりは南北韓相互体制認定、平和定着と交流協力などを骨子とした「事実上の統一」が望ましいというのだ。こうした認識の下、経済・社会交流の量的拡大は南北関係発展の指標に認識され、統一に対する関心と意志よりは交流・協力拡大のほうが重要な対北政策の目標のように見なされた。なおかつ統一に対するビジョンが曖昧で、統一は実現可能でも、望ましくもないという認識さえ拡散している。莫大な統一費用が挙論されれば統一はビジョンと希望の対象ではなく、恐怖と回避の対象だと見なされたりする。
これまでの統一論議のもう1つの限界は北朝鮮の状況に起因する。北朝鮮の政治・経済状況が次第に悪くなり、国際社会は北朝鮮の崩壊の可能性に関心を傾けている。これは米国だけではなく中国も同じだ。ムーディースやS&Pのような格付け会社は今年に入って韓国の国家格付け時、北朝鮮の急変の可能性を主要変数として考慮し始めた。これらの懸念は北朝鮮の崩壊そのものよりも韓国が政治的に、財政的にどれだけ統一を準備しているか注目されている。要するに莫大な統一費用と統一に対する準備不足は、国民の統一への意志を弱化させ、国家信用度を害する主な要因となる。それでも我々は北朝鮮の反発と国民的合意が得られず、そしてこれまでの統一論議の限界のため、積極的に対処することができなかったのが事実だ。
こうした意味で統一税の論議提案は統一論議の足かせを解く話題と言える。脱冷戦以後、変化された統一環境を点検して統一案に対する国民的合意を導出するきっかけになると思われるからだ。そのような点で理念と政派を離れ、いくつかの課題を提示することができる。
第一、失った統一論議の復活と統一に対する関心と意志を回復させることが急務だ。統一に対する否定的認識を払拭し、統一がもたらす未来ビジョンに対する論議を活性化しなければならない。
第二、南北関係を管理して安定のみを希求する消極的“対北政策”から脱皮して、統一を積極的に準備する真の“統一政策”を推進しなければならない。このために何より統一に対する国民的共感できるものを形成することに努力しなければならない。
第三、我々の統一ビジョンを周辺国と共有して彼らの支持を確保するためには統一外交をさらに強化しなければならない。国際社会を対象に南北統一の当為性はもちろん、統一過程で韓国が主導的役割を遂行すべきだという認識を拡散させなければならない。
統一準備は、未来成長動力を準備する投資だ。統一論議は「費用対便益」の両極端な論争を超え、民族の繁栄と発展のための未来ビジョンとして提示されるべきである。利益になれば統一をして損害になれば分断を継続させようという発想は、次の世代のための繁栄の礎を作るべき既成世代の職務遺棄としか見られない。統一の機会は来ても、私たちの努力と準備がなければ自然な統一はない。
チェ・ジンウク統一研究院南北協力研究センター所長
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