スティーブ・ジョブズのアップルが米国企業であるのは幸いだ。韓国の‘大企業たたき’を浴びていればすでに死体になっていただろう。アイサプライが公開したアップルのアイフォーン3G製造コストは16GBモデル基準で179ドル(約20万ウォン)。アップルはこの製品を中国で製造し、世界に60万ウォン(約4万4000円)以上で売るという。ほぼ3倍の暴利だ。営業利益率は三星(サムスン)電子の2倍の27%で、4-6月期には5兆ウォンを稼いだ。それでもアップルを非難する米国の政治家や公務員はいない。
米マイクロソフトのビル・ゲイツは財団を通して巨額を寄付している。一方、スティーブ・ジョブズは寄付にそれほど関心がない。個人レベルで毎年15億ウォン程度を寄付しているだけだ。それでも「アップルは過去最大実績を満喫しているが、中小企業と庶民は苦しんでいる」という非難はない。米国では「大企業の社会的責任論」さえもあまり聞かれない。むしろ「スティーブ・ジョブズの公式年俸は1ドルなのに、個人的にそれほどの金額を透明に寄付するのがすごい」という声が多い。
李明博(イ・ミョンバク)大統領がキャピタル会社を訪れてから10日以上も大企業に対する非難が続いている。政府と政界の主張がすべて間違っているわけではない。ウォン安-低金利-財政拡大の恩恵が大企業に偏っているのは事実だ。一部の大企業が中小企業に費用を押し付けているのも否定しがたい。しかし社会的な非難は明白な事実に基づいた場合に正当性を持つ。キャピタル会社の金利、雇用創出と投資拡大に関する統計からして誤って引用される場合が多い。
大企業は加害者、中小企業は被害者という図式も揺れている。大企業に対して声を高めている中小企業も少なくない。三星・LGはLEDの核心部品を製造するS社に対して「自社に物量をもっと多く配分してほしい」と要求している。この会社は技術の流出を防ぐため核心技術については特許さえも出さない。ある自動車部品会社は国内大企業の横暴のため、生産量の半分以上を米国や日本に輸出している。優れた品質と価格競争力を備えると、大企業のほうから接近してくる。経済が正常に動くためにはこうした中小企業が数多く出てこなければならない。誰もが作るような部品を持って‘コスト圧力’を非難する中小企業がいかに多いか考える必要がある。
二極化は世界経済のグローバル化のため避けられない現象だ。幸い、韓国はグローバル金融危機以降、格付けが目を引くほど高まった数少ない国だ。大企業と中小企業の関係を再調整する余力ができたということだ。さらに中国の生産コストが急上昇し、国内企業の投資が‘Uターン’する兆しも表れている。いつよりも大企業と中小企業が額を突き合わせて共存解決方法を見いだす適切な時期だといえる。いまや非難ではなく真摯な討論が必要だ。それでも大統領が「経済再生」から「親庶民」に背を向けると、当局者は数カ月前に「共生協力優秀会社」に選定した企業を凶悪犯のように扱っている。米国がアップルをこのような形で扱うだろうか。
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