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1938年マーガレット・ミッチェルのベストセラー『風と共に去りぬ』が映画化されることが伝えられ、、世間の関心は誰が男女主人公を演技するかに集中した。レット・バトラー役を当代最高の人気スターであるクラーク・ゲーブルが演じるということには誰も異議を提起しなかったが、女主人公スカーレット・オハラ役は違った。キャサリン・ヘップバーン、メイ・ウエストをはじめとする30余人のトップスターとその数倍にのぼる新人が候補に挙がっても、伝説的な制作者デビッド・セルズニックはずっと首を横に振った。セルズニックは「魔法のようなもの」を持った女優を望んだ。
女主人公なしに撮影が進行されてから4カ月が過ぎ、ようやくセルズニックは英国出身のヴィヴィアン・リーに決めた。世論は激しく反対した。無名の英国俳優が「南部の精神」を代表する女主人公を演じるのはとんでもないというのが理由だった。しかしセルズニックは全く動じず、結局、完成された映画を見た観客は絶賛を惜しまなかった。1939年作の「風と共に去りぬ」は、今でも「あまりにも完ぺきなキャスティングのためあえてリメークできない作品」の代名詞に挙げられる。
原作がある映画では、読者の頭の中に描かれたイメージと監督が選んだ実際の俳優が一致するかどうか論議にならない例は事実上ないといってもよいほどだ。最近では「シンクロ率(synchro率)」という新造語まで登場した。実際キャスティングされた俳優が原作のイメージとどれほど一致するかを示す言葉だ。シンクロ率が高いほど既存読者の支持が高いが、それが必ずしも最上のキャスティングとは限らない。
今年の韓国映画最高の期待作に挙げられる康祐碩(カン・ウソク)監督の「苔」は、原作であるユン・テホの同名ウェブトゥーン(インターネット連載カートゥーン)の大人気のため、制作の初期からシンクロ率論議に苦しんだ。主人公のうちユ・ヘグク役のパク・ヘイルは読者から「シンクロ率100%」という賛辞を受けたが、イ・ジャン役のチョン・ジェヨンは「シンクロ率50%未満」という声が多かった。しかし15日に映画が公開され、チョン・ジェヨンに対する支持度は急上昇している。
最近、後任の総理と青瓦台秘書陣の人選が話題だ。民心の中のイメージとシンクロ率が高いキャスティング、何をさせてもよくやり遂げそうな人気スターを前面に出すキャスティングにも長所があるが、最初は評価が分かれても歳月が流れた後に適役だったことが立証されるのが真の人選の妙味だ。キャスティング責任者の見識と意志が非常に重要な時だ。
ソン・ウォンソプJES記者
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