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現代(ヒョンデ)グループ創業主である故鄭周永(チョン・ジュヨン)会長が作ったというその有名な造船所。これからは伝説になった成功談には「プロジェクトファイナンシング」の魔法が隠れている。伝説はこう伝える。
鄭周永は造船所を作るお金がなかった。1971年、イギリスのバークレイズ銀行を訪ねる。「船を買う人がいるという契約書を持って来れば貸し出してやる」。鄭周永はその言葉を信じて世界を歩き回った。「受注契約書でお金を借り、造船所を作って船を作る」ついにギリシア・リバノス社が原油運搬船2隻を発注した。鄭周永はそれを元金にして蔚山造船所を作る。
その頃ならこれは確かに奇跡だ。無から有が創造された。しかし今の時代の目で見れば平凡なプロジェクトファイナンシングであるだけだ。建設会社が事務所を建てて売ると言えば金融会社は分譲代金を見てお金を貸してくれたもので、企業は、必要な事務所が作られるとは契約金を払って分譲してもらったものと特に違わない技法だ。これがどうして奇跡かということが、このごろの金融工学徒の抗言だ。
当時、鄭周永の奇跡を作ったギリシア。今、蔵がつぶれたこの国に向けて一部のヨーロッパの政治家たちはパルテノン神殿みたいな古代遺跡を売れと要求する。韓国がまったく同じ財政危機になったら、こんな要求に苦しむことができる。「京釜高速道路を売りなさい」。忘言みたいだが、2004年に政府が実際に検討したこともある。遺跡観覧料でも、高速道路通行料でも未来の収入があれば、鄭周永のようにそれを担保にして融資を受けたり、料金取り立て権を初めから丸ごと売ることができるという話だ。
もちろん古代遺跡や京釜高速道路を売ることはお金だけの問題ではない。何かを建設するのに使われるプロジェクトファイナンシングでもない。ところが原理はそこだ。2つとも時間の価値を扱う技術だからだ。現在と未来、2つの時点の間にある危険を予測・管理するのが現代金融の核だ。昔よりずっと千変万化した世の中だからその技術はより一層、精巧でなければならない。このごろ貯蓄銀行がじたばたしている。建設事業にプロジェクトファイナンシングをしたが引いてしまったのだ。予告された爆弾なのに監督当局はこれをきちんと規律できなかった。政府は一歩遅れて公的資金を投入するといって処方箋を出した。どこで誤ったのだろう。鄭周永の開拓精神ばかり評価して、40年前、彼の成功を予測した銀行と船主の知恵は見ないふりをしたのではないか。彼らも大ざっぱな計算だったのかもしれなくても。
ホ・グィシク経済部次長
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