政治は理想だけで成り立つものではない。政治家にとって哲学は重要だが、それを現実に接続するためには高度な打算が必要となる。マキャベリの『君主論』が今でも耽読される理由だ。政治家の資質を書生的な問題意識と商人的な現実感覚で要約した金大中(キム・デジュン)元大統領の鋭い洞察力が引き立って見える理由でもある。鳩山由紀夫日本首相が昨日、執権民主党の実力者である小沢一郎幹事長とともに辞任した。就任から8カ月後だ。理想主義政治の限界を見るようでほろ苦い感じがする。
鳩山首相が辞任した直接的な理由は支持率の低下だ。就任当時70-80%に達していた支持率は最近10%台に落ちた。このままでは来月実施される参院選惨敗が明らかだという集団的危機感が鳩山首相の背中を押したのだろう。支持率が急転直下したのは、普天間米国基地移設をめぐる論争が決定的だった。普天間基地を沖縄県外に移設するという鳩山首相の公約は米国の強力な反発で空約になってしまった。同盟国との合意と現地住民の公約履行要求の間で道筋をつかめず漂流し、結局、足踏みをする格好になった。この過程で鳩山首相は政策を主導し、世論を説得するリーダーらしい姿を見せることができなかった。
鳩山政権の発足は、事実上54年ぶりの政権交代という点で期待を集めた。日米同盟関係の調整、友愛に立脚した東アジア共同体の推進、官僚体制革新などの公約は大きな注目を浴びた。過去の問題に対する前向きな立場は韓国人にも期待を抱かせた。しかし鳩山首相は普天間基地が足かせとなり、他の問題にはほとんど手もつけられなかった。現実感覚が不足していたというしかない。
鳩山首相まで4人の首相が連続で任期を1年も満たせなかったことで、日本の政治的不安定が深刻な問題に浮上している。長期的な国政運営が脅かされるほどだ。高齢化や財政赤字など日本が直面している根源的挑戦を考えれば心配になるしかない。今の日本に必要なものは有能と老練を兼ね備えた指導者だ。
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