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R=BXP-C。50余年前、米国政治学者アンソニー・ダウンズが考案した投票率の集計法だ。有権者が投票する確率(R)は、支持候補が選ばれれば得る利得(B)に自分の票が当選を牛耳る可能性(P)を掛けた後、投票による費用(C)を差し引けば出るというものだ。選挙で1票で当落が変わることはほとんどないため、BXP値は小さくなるほかない。一方、投票する人を決めて投票所を訪れるのにかかる時間など、費用は多く発生する。Rがマイナスと出る公算が大きい理由だ。
すなわち費用と便益を計算することができる合理的有権者なら当然投票しない方を選ぶというのがダウンズの結論だった。それにもかかわらず投票する人々が厳存する逆説はどう説明しなければならないか。多くの学者たちが多様な学説を出した。例えばリスク回避説。投票をせず、一票差で支持候補が敗れる危険を受け入れられないからだそうだ。後日、ダウンズ本人の提示した答えは「民主主義を守るため」だった。すべて自分の利益を取るために投票をしなければ民主主義は崩壊の危険に処するほかない。それではもっと大きな損害を被るようになるので、むしろ投票費用を甘受する決断を出したという話だ。
どの説が正しいのか分からなくても、投票の力で民主主義が支えられるのは事実だ。世界各国がますます落ちる投票率を引き上げようと労力する理由だ。先日、総選挙を行ったイギリスでは若者たちが集まるフェイスブック(Facebook)サイトと選管委ホームページを自動連結させて有権者登録を簡便化した。11月の中間選挙を控えた米国は海外居住者などを対象に電子メール投票まで導入する計画だそうだ。いわゆる「強制投票制」を検討中の国もかなりある。投票をしなければ罰金を払わせ、罰金納付も延ばせば懲役刑に処するオーストラリア、4回以上投票しなかった場合、選挙権を奪うベルギー、投票確認証なしに3カ月間月給ももらえないようにするボリビアのように。個人の自由を侵害したという反論が強い。しかし投票も納税・兵役に劣らず必須義務だという強い主張もある。
明日行われる地方選挙投票率に対しては懸念も多い。まず50%を超えるのが目標だという。このようでは本当に強制投票という劇薬処方も考慮しなければならない。どうかその前に費用・便益計算など放り出す有権者たちが多くなれば良いだろう。民主主義を守るのに1日ぐらい「非合理的」になるのは大変なことか。
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