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ウィンストン・チャーチルが首相になったのは戦争の砲火の中であった。オランダ、ベルギーを経て、フランスに進撃するナチス・ドイツの勢いの前にイギリスが怖気づいていた。就任4日後に議会に立ったチャーチルは、決意に満ちた演説で国民に応戦の意志を悟らせた。「私は血と苦労、涙そして汗しか差し上げるものがない。神様がくれたすべての力を尽くし、あの化け物のような敵と争うつもりだ。勝利なくして生存もないので、目標は勝利だけです」
少し後、フランスまで崩れ、イギリスだけでドイツと対立しなければならない最悪の危機が近づくとチャーチルは今一度決然とした演説で士気を盛り立てた。「我々が勝てばヨーロッパは自由を取り戻し、全世界が高い所に進めるのです。後日、大英帝国が千年間、持続した後で言うつもりです。『あの時が最上の時間だった』と」以後76日連続ロンドンに砲弾が落ちたことで始まった9カ月間の「大空襲」をイギリスが持ちこたえたのはチャーチルの雄弁によるところが大きかった。
危機状況を打開するビジョンの提示はリーダーがもつべき核心に挙げられる。作家ジョナサン・スウィフトの言葉のように「リーダーの役割はビジョンをきちんと明らかにし、人々がそのビジョンを自分のことにすること」であるからだ。それでこそ組職のすべてのエネルギーが一つに集結され、目標を達成する可能性が高くなる。イギリス国民に勝利を確信させ、結局それを成就したチャーチルのように。
ビジョンを現実にするためには適時に大変な決断を出せるリーダーの断固とした態度が必須だ。チャーチルとともに第2次世界大戦を勝利に導いた主役の1人、連合軍司令官ドワイト・D・アイゼンハワーがそうだった。ノルマンディー上陸作戦が始まった“Dデー”は、本来は1944年6月5日だった。しかし激しい雨風が6日の未明にも無くなる気配を見せず、軍首脳部はどうしていいかわからず、司令官ばかり見つめた。アイゼンハウアーは果敢に史上最大の作戦を断行することに決めた。悪天候で敵の防備が疎かになった点を決して逃さなかったのだ。
天安艦の調査結果発表後、韓半島の緊張が高まっている。北朝鮮がいつどこで再び挑発して来るかわからない危機状況だ。軍の統帥権者として国民にビジョンを提示し、それをきっぱりと実践していく力強いリーダーシップが要求される時点だ。昨日、大統領の対国民談話はその第一歩だった。今回の危機を安保強国に生まれかわる機会にすることができるか…。すべてが彼のリーダーシップにかかっている。
シン・イェリ論説委員
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