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【噴水台】2位の逆説

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版



1936年、ベルリン五輪時、マラソン優勝候補はアルゼンチンのファン=カルロス・サバラだった。オリンピック2連覇を狙った彼は、初めから恐ろしく蹴り出した。彼に追い付こうとぐっと追いかけたのが、孫基禎(ソン・ギジョン)選手だ。これを意識したのかサバラはますますスピードをあげた。当時2位グループで一緒に走ったイギリス選手アーネスト・ハーパーが値千金な忠告を投げた。「彼はすぐくたびれます。ゆっくり、着実に走ってください」その言葉に孫選手は自分の普段の速度どおり走り始めた。案の定、無理なサバラは28キロ地点で追い越された後、棄権してしまった。金メダルは結局、孫選手のものになった。

長距離競走で1位で走る走者は2位走者より3倍以上大変だという実験結果が出た。追手を牽制しながら走る先頭の席がそれほど難しいという意味であるはずだ。サバラはそこで負けた。一方、孫選手は他人を意識しないように労力した。ひたすら自分自身との争いに忠実に貴い勝利をおさめた。


得ることも守ることも大変なほど1位の与える報奨は大きい。2、3位とは比較にならない。リチャード・ニクソン元米国大統領は「五輪に出て2位になると銀メダルは取れる。しかし政治で2位になると忘れる」と政界の冷酷さを指摘した。しかし五輪の2位も選挙で負けることに劣らずつらいことがある。かえって銅メダル選手が銀メダル選手よりもっと幸せだという「メダルの心理学」が出たほどだ。トーマス・キロビッチ教授(コーネル大)チームが92年バルセロナ五輪時、銀・銅メダル受賞者たちの授賞式の表情などを分析して発表した理論だ。銅メダルの場合「ノーメダル」を脱したこと自体に満足するが、銀メダルを取った選手たちは金メダルを逃した悔しさをふるい落とせないのだ。「世界でただ一人を除いてすべてに勝ったにもかかわらず死ぬほどつらい2位の逆説」(心理学者ウィリアム・ジェイムズ)だ。

昨日、閉幕したバンクーバー冬季五輪で善戦した韓国選手団が今日戻ってくる。1位の喜びを味わった人もいるが、2位あるいはそれ以下の成績でくやしがる選手が多い。しかしキム・ヨナ選手の座右の銘のように「これも過ぎていくだろう」。永遠の1位も、2位もないから傲慢にならず、気を落としもせず、もう一度、未来の跳躍を準備してほしい。今、私たちには自分との戦いに勝ち抜いたあなたたち皆が1位であり、金メダルの価値だ。

シン・イェリ論説委員





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