ソウル光化門(クァンファンムン)広場付近の教保ビルの後方にある「ピマッコル」は、‘ピマッキル’という紅サル門(ホンサルムン)だけを残して思い出の中に消えた。ヘジャング(スープ料理)路地・タコ路地など庶民の哀歓と情緒が染みついたこの場所には、超現代式高層ビルが建設され、さらに開発が進められている。朝鮮時代から「鍾路(チョンノ)大路を通る高官大爵の馬を避けて通った国民の道」が、「都市環境整備事業」という開発論理に押され、一瞬にして姿を消したのだ。文化的な価値を無視した再開発がもたらした結果だ。
仏パリに毎年数千万人の世界の観光客が訪れ、その美しさに感心する理由は、そのまま大切に保管してきた数百年の歴史にある。威圧的でない古くなった低い建物、人情味ある路地、その中に染み込んだ歴史的ストーリーと民衆の生活の痕跡は、人を引き込む魔力を発散する。ソウルもパリに劣らないほど悠久な歴史と文化が呼吸している都市だ。600年を超える首都なのだから。街と路地には歴史が刻まれている。しかし「都市開発」「現代化」という名分の下、ソウルはマッチ箱のような建物が並ぶ無色無臭の灰色都市に変わりつつある。
こうした点でソウル市が先日発表した「小単位再開発」計画はうれしい知らせだ。従来の全面撤去方式ではなく、都市の歴史と文化を生かすために必要な地域だけ選び、撤去を最小限に抑えるという趣旨に全面的に共感する。従来の全面再開発方式は竜山(ヨンサン)惨事で見たように深刻な社会葛藤を招き、生活の基盤が丸ごと消えるという副作用が深刻だった。古く汚くても保存すべきかどうかを評価したり、一部を改造して付加価値を高めたりすれば、歴史性も生かせ、地域の住民にも役立つはずだ。慶尚南道統営(キョンサンナムド・トンヨン)ドンパラン村は、ベニヤ板の家が並ぶ貧民街を壁画作業を通して観光名所にした好例として残っている。
都市の建物と道、路地は、韓国の歴史と文化資産の一部分だ。その間、韓国は一方的な開発主義で歴史を失ってきた。人間のにおいがする都市再開発がソウルだけでなく全国に広がることを期待する。
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