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孫基禎(ソン・ギジョン)がマラソンで金メダルを獲得したと記憶されている1936年のベルリン五輪は、記録映像の面でも2つのエポックをつくった。ヒトラーの寵愛を受けた女流監督レニ・リーフェンシュタールが作った記録映画「オリンピア」2部作は、今でもスポーツドキュメンタリーの教科書といわれる。それにこの大会は人類歴史上初、テレビを通じて中継放送されたオリンピックでもある。当時、ドイツ第三帝国はさらに多くの国民にオリンピックの熱気を伝えるために閉鎖回路テレビを利用してベルリン市内のあちこちで試合の映像を流した。
こうして始まったオリンピックのテレビ中継がお金になるという事実を人々が悟るまでにはあまり長い時間はかからなかった。1960年、米国カリフォルニア州スコーバレー冬季五輪の際、オリンピック中継権の取引が始まった。当時、米国CBSは独占の対価として5万ドルを支払った。
50年後、2010年バンクーバー冬季五輪と2012年、ロンドンオリンピック独占中継のためにNBCは20億ドルの巨額をベッティングして競争者たちを弾き出した。しかしNBCは果たしてそれほどの価値があるのかという批判に直面し、NBCが委縮した中、ABCとESPNの親企業であるウォルト・ディズニー社は2014年、冬季五輪と2016年五輪中継権を確保して「オリンピックはNBC」という牙城に傷をつけた。
今回のバンクーバー五輪の国内中継をSBSが独占し、KBSとMBCはSBSの不道徳さを、声を上げて批判している。しかし20余年間、主要スポーツイベントのたびに中継権と広告収入をめぐり3大地上波放送局が見せた裏切りの歴史を顧みたとき「被害者たち」だと堂々としているようには見えない。独占中継は国民の普遍的視聴権に対する脅威だという主張もあるが、共同中継を行ったとして、まったく同じメダル有望種目のみをどこのチャンネルでも重複中継して視聴率競争にがんじがらめになった前歴を勘案すれば、多様な視聴者の好みを満たすという名分がどれだけ虚しいのかも感じる。
視聴者たちは昨年、全国民の関心が集中したワールドベースボールクラシック(WBC)大会を控え、広告物量を期待できないとして地上波3社が一斉に中継不可の方針を打ち出した事実を鮮明に記憶している。放送局が掲げる国民の視聴権とは、放送局の収益がともなうときだけ考慮の対象になることを、これまでの歴史が証明しているのだ。
ソン・ウォンソプJES記者
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