全世界的に最も多くリメークされた歌はビートルスの「イエスタディ」だ。１９６５年に発表したアルバム「ヘルプ！」に収録されたこの曲は３０００回以上歌われ、ギネスブックに掲載された。数字では比較にならないが、国内にもたくさんリメークされた曲がある。９０年、肝硬変で世を去った故キム・ヒョンシクの「私の愛、私のそばに」だ。音楽配信サイトで「私の愛、私のそばに」を入力するとおよそ５０曲ヒットする。ヤン・ヒウン、チェ・ジンヒ、キム・スヒ、ムン・ジュラン、キム・ランヨン、ノゴチリ、チョン・イングォン、パク・カンソン、キム・ジャンフン、ＪＫキム・ドンウク、ＳＧワナビー、ランブルフィッシュらが歌った。昨年には俳優キム・ミョンミンも歌った。撮影過程に合わせ、２０キロを減量した同じタイトルの映画でだ。エンディングクレジットが上がる場面で流れる切ない声が彼だ。


この歌が収録されたキム・ヒョンシクの６枚目アルバムは、彼の死後の９１年６月にリリースされた。「音楽好きという人なら（そのアルバムが）ない家はない」くらいにかなりポピュラーだった（大衆音楽評論家ソン・ギチョル）。特に「私の愛、私のそばに」は「その年の年末、クリスマスキャロルよりたくさん歌われた」というほどだった。前奏と間奏、後奏で繰り返される哀切な弦のメロディーは強い中毒性がある。いわゆる「ポンギ」と呼ばれるトロット風メロディーだ。ここに夜のステージに立っていた時代「恐怖の赤いジャンパー」と呼ばれた故人の爆発的な歌唱力、夭折歌手の神話が加わってこのアルバムは２００万枚超える売り上げ高をあげた。


「私の愛、私のそばに」がヒットしたとき、いちばん驚いた人は作詞・作曲をしたオ・テホだ。８８年当時、新村（シンチョン）ブルースのメンバーだったオ・テホが練習室で口ずさんでいるのを耳にしたキム・ヒョンシクが歌をくれと言った。オ・テホはわかったと言った後、すっかり忘れた。キム・ヒョンシクは９０年、死を控えてレコーディングを試みる。ある音楽雑誌とのインタビューで「とても痛くてそのまま死んでしまいたい」と吐露したほど、死は近くまで来ていた。魂を載せて吐き出すように歌った最後の歌だったが、結局、仮レコーディング分を残すのにとどまった。「時間は遠く家に向かって行くのに」が「時間は遠くなる方に向かって行くのに」と間違って歌われたからだ。

今年は歌客キム・ヒョンシクの２０周忌だ。２０年が経ったが、彼が聞かせきれなかった歌に対する懐かしさは現在進行形だ。先週末、あるケーブルチャンネルで追慕ドキュメンタリーが放送された。これに合わせて献呈アルバムもリリースされた。「私の愛、私のそばに」もまた歌われた。故人の息子であると同時に歌手に成長したキム・ワンジェが歌った“思父曲”だ。

キ・ソンミン文化スポーツ部記者