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【噴水台】アップル

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版



「ビッグアップル」(The Big Apple)は、米国ニューヨーク市のニックネームだ。ニックネームのルーツをめぐり、説はまちまちだ。19世紀初め、ニューヨークの人々がフランス出身の美貌のサロンのママを「イブ」と呼ぶとそのママは雇用する女性たちを「私のかわいいリンゴたち」(my irresistible apples)と呼んだという。その後、この言葉が広まって「ニューヨーク=アップル」になったというのがもっともらしい推論だ。由来は明らかではないが、この言葉を大衆化した人が1920年代、ニューヨーク・モーニングテレグラフの記者だったジョン・フィッツジェラルドということに異見がない。彼はある日、ニューオリオンスの馬小屋の使用人らが「ニューヨーク競馬場はすべての騎手が羨むビッグアップル」と話すのを聞いた。そのときから自分の文にこの言葉を愛用した。

30年代ニューヨークは本当にリンゴの天国だった。リンゴ露天商5000~6000人が通りに並んだからだ。大恐慌の失業者たちだった。問屋で72個入りのリンゴの箱を持ってきて1つ5セントですべて売れば、1ドル以上を手にすることができた。証券会社も職員たちの収入が急減すると路上でリンゴを売ることができるように休暇を与えた。この休暇を「アップルデー」と言った(ロン・チャーナウ「モルガン家 金融帝国の盛衰」)。胸が痛むリンゴの記憶からか、50~60年代には「ビックアップル」という言葉がほとんど使われなかった。この言葉がまた復活したのは71年、ニューヨーク市が「ビッグアップル」と自称して観光客誘致を始めた時だ。フィッツジェラルドが住んでいたマンハッタンの1コーナーも97年「ビッグアップルコーナー」と命名された。


ニューヨークのリンゴではないとしてもリンゴほど歴史によく登場する果物があるだろうか。アダムとイブのリンゴ、ニュトーンのリンゴ、ウィリアムテルのリンゴ、スピノザのリンゴなど、歴史の幹と枝にはあらゆるリンゴたちがふさふさと実っている。韓国人にも忘れることができない「大虐殺のリンゴ」がある。1923年関東大震災の時「朝鮮人が日本人を襲う」というデマに触れた日本人たちは人々に日本語で「リンゴ」を発音してみろと言った。発音が下手ならば朝鮮人だとして連行し、殺害した。

先月28日、韓国にはまた新たなリンゴが登場した。一口切り取って食べたリンゴをロゴに使う米国アップル社のiPhoneだ。予約分を含み1週間で6万5000台も売れたという。「ビックアップル」ニューヨークのように人々を果てしなく引き込む勢いだ。世界で最も味にうるさい韓国の消費者たちもアップルの味の誘惑には我慢できないようだ。

ホ・グィシク経済部次長



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