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「雀は枝を争って落ち/飛ぶ虫も庭園にいっぱい遊び歩いているね/マッコリよ、お前を誰が作ったのか/1杯で千の憂いを忘れるね」
王の憂いをなだめてくれた1杯、それはマッコリ(どぶろく)だった。生母である廃妃尹氏の怨念を晴らそうと甲子士禍を起こしたその年、燕山君(ヨンサングン)はマッコリ礼賛を残した。廃位された日にもまた違うどぶろくの詩を残している。すべて「燕山君日記」に伝わる。
「江華(カンファ)道令」哲宗(チョルチョン)もマッコリを愛した。江華島で農業を営み暮らしていた後、王となった彼は、さまざまな海の幸、山の幸を目の前にしても「宮廷にはどうしてマッコリがないのか」と不満を言った。そんな王のために中殿が実家の奴婢を通じてマッコリを手に入れてきたという。後には尚宮にソウル近郊でどぶろくを作らせて隠密に宮に持ちこんだと伝わる。(ナム・テウ「酒党たちの酩酊と風流」)
こんなに王の愛も受けたが、基本的にマッコリは庶民の酒だった。「世宗実録」には辺境に送られた軍人たちが粟の飯にマッコリしか食べられなかったと不平をいう内容が記載されている。酒を擬人化した「麹先生伝」を書いた高麗の文豪、李奎報(イ・キュボ)は「官位から退いて収入が減り、やむを得ず、白酒(マッコリ)を飲むようになった」という文をも残した。
「庶民の酒」と同時に「王の酒」だったマッコリは「大統領の酒」になった。朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領が田植えをする農民たちと畦に座って注ぎ合ったりしながらマッコリのやかんを傾ける姿はひとつの象徴だった。盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領も隣人とともにどぶろくを楽しんだ。李明博(イ・ミョンバク)大統領は「マッコリ国際広報チーム長」を自任している。バラク・オバマ米国大統領との首脳昼食会に添える酒にもマッコリが最後まで挙論された。「米国大統領も飲むかもしれなかった酒」と言えるか。
マッコリはずっと進化している。11月第3木曜日の19日、新米マッコリが「マッコリヌーボー」という名で販売された。同じ日に販売されるその年のブドウで作ったフランス産の「ボジョレーヌーボー」を相手にしたマーケティングだ。予約販売ではボジョレーヌーボーを上回ったという話も聞こえる。1965年、米で釀造することが禁止され、登場したがさつな味の「小麦粉マッコリ」だろうが、有機農米で作ってガラス瓶に入れたマッコリだろうが、憂いなげきをなぐさめる酒であるには変わりがない。詩人のチョン・サンビョンは「マッコリは酒ではなく/飯と同じ/飯であるだけでなく/楽しさを加味してくれる/神様の恩寵なのだ」と歌った。マッコリよ、お前を誰が作ったのか。
ク・ヒリョン政治部記者
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