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【コラム】本を読まない韓国社会の限界

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
 今季最大の期待作というミュージカル「英雄」を友人と一緒に見に行った。10月26日の初公演、「明成皇后」制作チームの作品だけに関心も大きかったが、一方で心配もあった。「また愛国主義商品では?」という疑問だった。「華麗な舞台は他のミュージカルに劣らないが、実際に見てみると愛国心が深く入り込んでいて…」(元MBC副社長シン・ジョンイン氏)、「活劇を見ているようでちょっと…」(デザイナーのイ・ミョンヒ氏)。

歌手チョ・ヨンナム氏の判断もそうだった。‘韓国人向け’に制作したコンセプトからして同意しがたいという指摘だ。「韓国人だけの悲憤慷慨だ。日本人や中国人もこれを見て涙を流すような作品にすべきだったが…。簡単なことではないが、伊藤博文をひとまず明治時代の日本が作った人物とみなし、私たちの偉大な英雄の安重根(アン・ジュングン)がなぜ彼に拳銃を向けることになったかという葛藤と破局を込めてほしかった…」

「英雄」が本当に私たちの時代の文化商品を狙ったものとすれば、厳しい評価や補完は避けられないが、華麗なコンピューターグラフィック・演技・歌にはミュージカルの進化が見える。惜しまれるのは善悪二分法の歴史認識で満たされたドラマ構造だ。虚構的人物の朝鮮の女官(ソルヒ)の設定がその証拠だ。明成皇后の女官だったが、芸者に変身し、伊藤に接近するキャラクター…。なぜこうなのか。われわれの公演芸術力が、歴史認識が、この程度ということなのか。


チョ・ヨンナム氏は「安重根ストーリーが基本的に不足しているのでは」と言うが、そうではない。私が知る限り、安重根の資料は不足していない。公判記録が書かれた「安重根戦争終わっていない」(イ・キウン著)は人間・安重根の良い資料だ。金九(キム・グ)の「白凡日誌」も読み返さなければならなかった。

「白凡日誌」の記録のように安重根・白凡は10代の時に出会った。白凡が東学革命失敗の後、安重根の父(安泰勲)の黄海道(ホァンヘド)の家に隠れた時のことだ。安泰勲は東学討伐隊長だったため2人は敵同士だった。しかしお互いの心を知って「害しない」という秘密協約を結んだ。安泰勲に身を任せたのもこうした信頼のためだが、当時、白凡は3歳下の安重根に関する貴重な記録を残した。「楚覇王のような人生を送るとしながら狩猟に没入した」安重根の獄中陳述のように、「白凡日誌」の描写もそうだ。

興味深いのは後日のことだ。白凡は安重根の姪を長男の嫁として受け入れた。2人の英雄の家門は敵から後援者に、後援者から婚脈になったのだ。それで100年前、韓国社会の偉大な友情を演出したが、ミュージカル「英雄」にはこうした痕跡がない。

ここで問い直そう。「英雄」の脆弱性は何のためか。制作チームの限界を越えて、「本を読まない韓国社会」の限界ではないだろうか。実際、私たちには安重根評伝が一冊もない。それが出版の現実だ。一つのミュージカルが人文的基盤が脆弱な私たちの後ろ姿を映し出している。「英雄」の修正・補完を期待する。



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