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「自分としては何なのかわからないもの、その何だかわからないものが、すべての大陸を、皇后たちを、すべての軍隊を、全世界をゆさぶって動くのだ。クレオパトラの鼻、それが少し低かったら、地球のすべての表面は変わったはずだ」と書いた人はフランスの哲学者パスカルだった(『パンセ』)。歴史を合理的因果関係よりは偶然的事件の連続と見る偶然史観の信奉者たちもパスカルと同じ側に立つ。もしそうだったら、アントニウスがクレオパトラにはまって本妻を捨てることもなかったはずであり、したがって義弟のオクタウィアヌスと激突したアクティウムの海戦も起きなかったはずで、ここで勝利したオクタウィアヌスがローマ帝国の初代皇帝になることもなかったという過程だ。だからある男性がクレオパトラという女性に魅了された偶然的事件が歴史の方向を変えたという説明だ。
もちろん偶然だけで歴史を説明することはできない。偶然も元はと言えば必然の産物だった。「バンと蹴ったらウッと言って死んだ」というソウル大生朴鍾哲(パク・ジョンチョル)の死と隠ぺい操作事件が6月抗争の起爆剤の役割をしたことは事実だが、必ずその事件がなくても民主化運動という止まらぬ歴史の流れには変わりがなかったはずだ。そのため「歴史は過去と現在の終わりのない対話」という命題を残したEHカーは名著「歴史とは何か」で、偶然、士官を排撃した。しかし歴史には確かに偶然の役割が存在する。たとえばこんな形だ。14世紀のトルコ皇帝バヤジットは痛風が発病し、中央ヨーロッパへの進撃を中断した。歴史家ギボンはこの事件を持って「1人の1本の筋肉のできものが、多くの国民の苦難を防いだり延期させたりすることができる」と記述した。
おととい20周年を迎えたベルリン障壁の崩壊は東ドイツ共産党スポークスマンの失言という偶然で触発されたという報道が出て話題を集めた。東ドイツ住民の旅行自由化措置を発表した東ドイツ共産党スポークスマンに、記者たちが間髪を入れず発効時点を問うと、うっかり「今すぐ」と答えてしまったのが、東ドイツ住民たちにつちと斧を持って駆け付けさせ、意図せぬ障壁を崩す結果につながったというのだ。もちろんベルリン障壁の崩壊は必然だが、よりによってその日、そのように劇的な方式で崩れたことは確かに偶然の力だ。だから歴史はおもしろい。偶然のない必然だけで回る歴史の水車は、どれだけ退屈でもどかしいものか。
イェ・ヨンジュン政治部次長
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