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【コラム】恣意的に作られた親日人名辞典

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
「詩人、李漢稷(イ・ハンジク、1921~76)の父親は帝国主義・日本による植民支配時代に中枢院(朝鮮の官庁名)の参議、慶尚北道(キョンサンブクド)知事などを務めた親日派だった。1950年に李漢稷は釜山(プサン)で、当時副大統領だった金性洙(キム・ソンス)の娘と結婚式を行った。しかし金性洙は李漢稷が親日派の息子だという理由から、結婚式に出席すらせず、その後、この夫婦に徹底的に背を向けた」(「鄭奎雄の文壇の裏街道」 11月1日付の中央SUNDAY)。

「いわゆる民間の有志らが警察の指揮の下、腕に黄色い腕章をつけて、叫び、怒鳴りつけていた…(夢陽・呂運亨)。黄色い腕章をつけて街を闊歩(かっぽ)していた…防空訓練などの際は身を隠れてしまうほうがかえって良いのでは。私は嘆きながら、彼の闊歩する後姿を見つめた」(1949年7月号の「新天地」)。

民族問題研究所があさって、およそ4300人の名前を掲載した「親日人名辞典」を出版するという。これまで2回にわたり見本として発表された名簿によると、親日派の息子だった娘婿に徹底的に背を向けた仁村・金性洙(インチョン、キム・ソンス)は「親日派」の烙印を押されることになる。植民支配時代に講演を行ったからだという。


独立運動家、呂運亨(ヨ・ウンヒョン)の行為を批判した上記の文は、作家の金東仁(キム・ドンイン)が書いた。呂運亨は「半島学生出陣報」「京城日報」などに徴兵を勧誘する文を掲載するなど親日の証拠が明らかだ。「大東亜はわが日本を中心に建設されている。一大の決戦は、東亜10億の生存権を獲得するための戦いだ。血が乱舞する中、半島はいったい何をしていたのか」と叫んだ呂運亨は、しかし、親日辞典に含まれない。彼が帝国主義・日本に追従したことを批判した金東仁は含まれる。

あさって発表される名簿に名前が含まれるかが気になる人がもう1人いる。北朝鮮の親日人物らだ。日本関東軍の通訳として活動した金日成(キム・イルソン)の実弟の金英柱(キム・ヨンジュ)、満州国の検事長出身で検察総長、金日成大学の教授を務めたハン・ナッキュ、植民支配時代に咸興(ハムフン)鉄道局長を務め、北朝鮮臨時人民委員会の交通局長になったハン・ヒジン、旧日本軍のパイロット出身とされる人民軍空軍司令官の李活(イ・ファル)らがそれらだ(「使い道のあるバカ者たちのうそ」)。

ブレーキをかけ、局面転換などを図っているわけではない。親日人名辞典の編纂(へんさん)作業はおよそ8年にわたって行われた。国民の税金も少なくなく投入されている。それなら、選定の基準から、国民の大多数の共感を得なければいけない。「軍人は少佐、警察は警部以上」といった具合で、職位を中心に正すから、植民支配時代の実像がきちんと反映できていないのだ。

名簿に含まれる朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の場合、日本の陸士を卒業した後、満軍(植民支配時代の満州国の軍隊)に配属され、1944年7月に万里の長城を越えた所にある熱河省の歩兵第8団に配置された。主な敵は中国の八路軍だった。彼は副官として作戦命令を伝え、部隊の旗を管理した。諸資料・証言をまとめてみると、実際の戦闘には参加したことがない。

そのため光復(解放)直後の反民法は「悪質な親日行為」を断罪の基準と見なした。「軍、警察の官吏として、悪質な行為で民族に害を加えた者」「各部門で日本の侵略主義やその施策の遂行に協力するため、悪質かつ反民族的な言論、著作やその他の方法で指導した者」を処罰対象に明記した。

光復の直後、あらゆる資料と証人があふれていたその時期、先人らは反日意識が足りないか、または鈍いために基準を職位ではなく「悪質性」に定めたのだろうか。そうではない。植民支配時代の生き生きとした実像や内幕を直接体験し、あまりにもよく知っていたからだった。朱益鍾(チュ・イクチョン、落星垈経済研究所)博士によると、植民支配時代に韓国人は韓国人の官吏がより増え、高官ポストにつくことを望んだ。日本人よりはましだったからだ。植民支配時代末期の韓国人の「体制内化」現象も踏まえるべきだと朱博士は指摘する。

万一、インドが「親日辞典」を基準にして「親英人名辞典」を作るとしたら、植民地の宗主国である英国で弁護士資格を取ったガンジーやネルーも含まれることになるほかないからだ。過去から教訓を得て、未来の警戒にするというのが親日辞典の趣旨であろう。しかし、筆者が見るには、過去や未来より現在のイデオロギーをめぐる争いや政争に尽くした格好となってしまった。作業の偏向性、恣意性のせいである。

盧在賢(ノ・ジェヒョン)論説委員



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