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◇通訳、言語と文化を仲裁する
00年のSK球団設立当時に英語通訳として入社したキム・ヒョンス ・マネジャーはこれまで10年間、通訳として働いている。プロ野球8球団の通訳の中で最先端にいる。
キム氏は「30秒以内に重要な意思決定が行われるのは不可能。普段から外国人コーチと外国人選手の間を頻繁に行き来しながらお互いを把握し、信頼を得ることがはるかに重要だ」と話した。
通訳は異なる文化と言語の境界に立っている。外国語を使う韓国人は中心を捉えることからして難しい。キム氏は「07年に金星根(キム・ソングン)監督が赴任した当時、対話が非常に難しかった。私が監督に言いたいことを言えなかったので、私が担当している米国人選手もそうなってしまった。普段からコミュニケーションができていなから後に大きな問題が発生した」と振り返った。
ロマノは速いテンポで投手を交代する金監督に対して常に不満を抱いていた。コーチがマウンドに上がれば、ロマノの顔は対話が始まる前からゆがんだ。日々積もる不満はその年6月6日のLG戦で爆発した。打ち取った打球が安打になったり、守備の失策が絡んだりして序盤から失点すると、金監督はすぐにロマノを交代させた。ロマノは加藤コーチとは話が通じないと判断し、マウンドを降りて行った。そして大声を張り上げながら金監督に向かっていった。韓国文化では許されない抗命だ。驚いた通訳のキム氏は体を張ってロマノを抑えた。翌日、ロマノは2軍に落ちた。
キム氏は「大変なことになったと思った。東洋の文化構造は垂直的だ。トップに監督がいる。金監督は生涯そのように生きてきた人だ。日本人コーチもこうした組織論理を熟知している。米国で生まれて育った選手は基本的に水平的な思考をする。こうしたかい離を狭めていくのが自分の役割」と話した。
グラウンドで言語は手段にすぎない。目的は野球だ。8球団の通訳のうち外国語専攻者はほとんどいない。ハンファ・イーグルスのイ・インヨン代理は韓国外大経営経済学科を卒業した。05年に卒業した後、香港の金融会社に合格したイ氏は、ハンファ球団が英語通訳を採用するという求人広告を偶然目にした。ハンファの熱血ファンだったイ氏はすぐに履歴書を出した。
仕事がやさしくはなかった。性格の違う外国人選手に合わせることが通訳よりもっと大変だった。重要な試合で打ち込まれた投手がマウンドを降りながら「腹が減ったから試合が終わりしだいステーキが食べられるようレストランの予約をしておいてくれ」と話した時には唖然とした。
捕手が「頑張れ」という意味で投手の尻をポンとたたくのは韓国選手同士なら自然な親しみの表示だ。しかし米国人には違和感があった。ある米国人選手は通訳に対し、「韓国で男が男の尻を触るのにどんな意味があるのか」と真剣な表情で尋ねたりもした。外国人選手2人と韓国選手60人が一緒に過ごしながら生じる文化的衝突を緩衝するのも通訳の任務だ。
◇通訳産業の付加価値
04年にLGの通訳を務めたチョン・スンファン氏はLGの看板打者だった李炳圭(イ・ビョンギュ)と親しかった。06年のシーズンが終わった後、李炳圭がフリーエージェント(FA)になると、チョン氏が代理人を引き受けて中日入団を支援した。現在、チョン氏は中日広報部職員だ。
球団内で通訳が作り出す付加価値は相当なものだ。各球団は外国人選手2人に年間10億ウォン(約8000万円)ほど使う。年俸とボーナスを加えると1人当たり50万ドル程度が必要で、宿舎や食事、家族の航空券などを提供する。球団が年間およそ200億ウォンを支出することを考えると、比重はそれほど大きくない。しかし外国人選手の採用と管理は野球団の核心事業だ。
国内選手の需給は硬直しているため固定変数の要素に近い。今シーズン1位になった起亜は外国人投手に恵まれていた。上位チームはほとんどそうだ。一方、外国人選手が負傷したり問題を起こせば好成績を出すのが難しい。10億ウォンの活用が200億ウォンの事業を左右するということだ。球団内の職級によって年俸(4000万ウォン前後)を受ける通訳は海外事業チーム長の役割を担う。
マウンドに集まる韓日米…30秒間の通訳が試合を決める(1)
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