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「お年寄りのための国」はなかった。今のカスピ海沿岸に住んでいた古代カスピ族は70歳が過ぎると皆、飢え死にさせた。遺体を原野に捨てた後、どんな獣が持って帰るかで運を占ったりした。ワシに運ばれるのがいちばん運がよく、野獣がその次。どんな動物も接近しなければ運が悪いと考えた。米大陸原住民の場合、年寄りたちにつらいことをさせ、力を失わせて死に至らせた。北極海一帯のエスキモーたちは老けて自ら食べものを求められなければ首を締めて殺すとか群れが移住するときに残して去った。東洋も例外ではなく、女真族は1人で身動きできない老父母を袋に入れた後、木の枝にかけて弓を射った。ただ一発で死に至れば親孝行とほめたたえられたという。
食糧・燃料などが十分でなかった古代社会で、お年寄りの奉養は贅沢だった。限定された資源を生産性の高い若者に使う方が集団全体にずっとよいと考えた。殺老、棄老の風俗が蔓延していた理由だ。経済発達とともに徐々に影をひそめた「年寄り粗末論」がこのごろ米国を熱くしている。健保改革を推進中のオバマ政府が財政難に陥った高齢者対象公共保険「メディケア」(Medicare)を効率化すると明らかにしたのが発端だった。
保守野党は直ちに「オバマが力無く病んだ高齢者たちの治療を中断させようとしている」と猛攻に出た。怒る市民が野党の側に傾いている。しかし反対の声も多い。900万人近い子どもたちが無保険で苦しんでいるのに、65歳以上の高齢者たちだけお金の心配なく医療を受けられるのは不公平だという主張だ。高齢者たちの過度な延命治療を減らし、そのお金を子どもたちの予防接種に使おうという提案も出ている。世代間にひとつ戦争が起こった様相だ。かつて少子化、高齢化による激変を予告した「エージクウェーク」(Agequake)の著者ポール・ウォリスは「投票権を武器に扶養義務を強要する高齢者たちとこれに反発する若者たちの対決は避けられない」と見込んでいる。
韓国も川の対岸を見物する境遇ではない。2050年になれば65歳以上の高齢者が国の人口の38%に増えて若者1.3人が高齢者1人を食べさせてあげなければならない。7人が1人を扶養する今も大変だと騒がしいのに、そのころになったらその昔の殺老、棄老の風俗が再現されないと壮語することができるだろうか。
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