いまや受け入れるべきことは受け入れなければならない。 北朝鮮は核保有国だ。 そして北朝鮮は核を放棄しないだろう。 北朝鮮が自発的に放棄しない核兵器を強制的に除去する方法もない。 核施設を爆撃する方法があるというが、北朝鮮が核兵器をいくつ保有し、どこに隠しているか分からない状況では机上論にすぎない。 ある人は韓国と日本が核武装をすべきだと主張するが、仮にそうなれば北朝鮮は核兵器を放棄するどころか、むしろ核兵器の量産に進むはずであり、北東アジア地域は各国が競って核武装をする悪夢のような状況になるだろう。
今になっては誰のために北朝鮮が核を保有することになったかという論争は何の効果もない。 一方的な北朝鮮支援が原因だったとか、ブッシュ政権の対北朝鮮強硬策がきっかけになったとかいう相互誹謗的な声は全く役に立たない。 残された問題は「今後どうするか」だけだ。
今までの私たちの考え方や政策は、北朝鮮が核を保有していない状況を前提にしたり、核保有を阻止することに焦点を合わせてきた。 しかし今では、一日も早く新しい現実に沿った発想の転換を試みて政策を開発する必要がある。 そして新しい対北朝鮮政策を開発するためには北朝鮮の核保有が南北間の勢力均衡にどのような変化をもたらしたかを冷静に計算しなければならない。
1980年代前半、南北間では軍事的・外交的・経済的均衡がある程度維持されていた。 北朝鮮経済は70年代序盤まで韓国に決して遅れを取っていなかった。 外交的な側面で見ると、80年代序盤まではむしろ韓国が北朝鮮に押されていた。 ベトナムが敗亡し、米国が中共と修交し、在韓米軍の撤収が終始安保上の最大の話題だった状況で、北朝鮮はソ連と中共の積極的な支援を受ける一方、非同盟圏との交流を通して国際舞台で韓国を上回っていた。 7・4南北共同声明は韓国がこの当時に感じた危機意識の発露だった。
軍事的にも北朝鮮は優位な状況だった。 韓国が北朝鮮と軍事的均衡を維持できたのは、韓米同盟とそれを後押しする米国の「核の傘」のためだった。 すなわち従来の軍事力で北朝鮮に遅れを取ったが、韓国が北朝鮮との戦略的等価性(strategic parity)を確保できたのは結局、米国の戦略的・戦術的な核があったからだ。
ところが90年代に入って南北間の均衡が崩れ始めた。 ソ連と東欧圏が急激に崩れ、中国が資本主義式の改革・開放政策を採択した。 さらに韓国が高度成長を続けながら民主化を成し遂げる半面、北朝鮮は経済が崩壊し、金日成(キム・イルソン)が死去し、洪水と飢饉に襲われる最悪の状況を迎えた。 経済・外交・軍事分野で北朝鮮はもはや韓国の相手にならなかった。
このため北朝鮮が軍事・安保的均衡を取り戻そうと着眼したのが核兵器の開発だった。 100万人が飢えて死亡しているのに何が核だと非難するが、実際、北朝鮮政権の立場では、100万人が餓死する犠牲を払ってまでも依存するしかない核兵器の開発は絶体絶命の課題だった。 その結果、北朝鮮政権は韓米同盟と一種の核等価性(nuclear parity)を基盤にした戦略的均衡を再建した。 北朝鮮が狙ったのはまさにこれだ。 したがって今後はこうした勢力均衡を維持できる方法を講じなければならない。
最近の状況で私たちに多くのことを示唆するものは60-70年代に米国が推進した対ソ連デタント政策だ。 米国の代表的な反共主義者だったリチャード・ニクソンは、米ソ間の核等価性が確立されて相互確証破壊(MAD:mutually assured destruction)体制が構築されると、この均衡を崩さないためにソ連とのデタント政策を推進した。 結果的に戦略核兵器の縮小をはじめとする数多くの交流と交渉を通じて徹底した相互検証手続きと信頼を築いていき、冷戦期間を無事に送ることができた。 そしてデタントを可能にしたソ連の開放は、後にゴルバチョフのペレストロイカやグラスノスチのような改革政策の礎石になった。
いま必要なのは韓半島版「デタント」政策だ。 李明博(イ・ミョンバク)政権としては大きな発想の転換と政治的冒険が要求される。 同時に保守政権であるからこそ推進できる政策でもある。 ここに韓半島と北東アジアの安定と平和・繁栄がかかっているのは言うまでもない。
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1980年代前半、南北間では軍事的・外交的・経済的均衡がある程度維持されていた。 北朝鮮経済は70年代序盤まで韓国に決して遅れを取っていなかった。 外交的な側面で見ると、80年代序盤まではむしろ韓国が北朝鮮に押されていた。 ベトナムが敗亡し、米国が中共と修交し、在韓米軍の撤収が終始安保上の最大の話題だった状況で、北朝鮮はソ連と中共の積極的な支援を受ける一方、非同盟圏との交流を通して国際舞台で韓国を上回っていた。 7・4南北共同声明は韓国がこの当時に感じた危機意識の発露だった。
軍事的にも北朝鮮は優位な状況だった。 韓国が北朝鮮と軍事的均衡を維持できたのは、韓米同盟とそれを後押しする米国の「核の傘」のためだった。 すなわち従来の軍事力で北朝鮮に遅れを取ったが、韓国が北朝鮮との戦略的等価性(strategic parity)を確保できたのは結局、米国の戦略的・戦術的な核があったからだ。
ところが90年代に入って南北間の均衡が崩れ始めた。 ソ連と東欧圏が急激に崩れ、中国が資本主義式の改革・開放政策を採択した。 さらに韓国が高度成長を続けながら民主化を成し遂げる半面、北朝鮮は経済が崩壊し、金日成(キム・イルソン)が死去し、洪水と飢饉に襲われる最悪の状況を迎えた。 経済・外交・軍事分野で北朝鮮はもはや韓国の相手にならなかった。
このため北朝鮮が軍事・安保的均衡を取り戻そうと着眼したのが核兵器の開発だった。 100万人が飢えて死亡しているのに何が核だと非難するが、実際、北朝鮮政権の立場では、100万人が餓死する犠牲を払ってまでも依存するしかない核兵器の開発は絶体絶命の課題だった。 その結果、北朝鮮政権は韓米同盟と一種の核等価性(nuclear parity)を基盤にした戦略的均衡を再建した。 北朝鮮が狙ったのはまさにこれだ。 したがって今後はこうした勢力均衡を維持できる方法を講じなければならない。
最近の状況で私たちに多くのことを示唆するものは60-70年代に米国が推進した対ソ連デタント政策だ。 米国の代表的な反共主義者だったリチャード・ニクソンは、米ソ間の核等価性が確立されて相互確証破壊(MAD:mutually assured destruction)体制が構築されると、この均衡を崩さないためにソ連とのデタント政策を推進した。 結果的に戦略核兵器の縮小をはじめとする数多くの交流と交渉を通じて徹底した相互検証手続きと信頼を築いていき、冷戦期間を無事に送ることができた。 そしてデタントを可能にしたソ連の開放は、後にゴルバチョフのペレストロイカやグラスノスチのような改革政策の礎石になった。
いま必要なのは韓半島版「デタント」政策だ。 李明博(イ・ミョンバク)政権としては大きな発想の転換と政治的冒険が要求される。 同時に保守政権であるからこそ推進できる政策でもある。 ここに韓半島と北東アジアの安定と平和・繁栄がかかっているのは言うまでもない。
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