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小説家のキム・ビョルアさん(40)が朝鮮(チョソン、1392-1910)時代のアナーキスト(無政府主義者)、朴烈(パク・ヨル、1902-74)と金子文子(1903-26)の運命的な愛を素材にした長編歴史小説「熱愛」を発表した。
2人は「小説より、もっと小説のような」実際の事件の主人公だ。これらは23年、帝国主義日本の首都・東京の中心部に「不逞社」を組織した後、天皇暗殺を図ったが、逮捕され、死刑判決を言い渡された。驚天動地の大事件といえるテロの謀議と深い愛。
この魅惑の素材を小説で調和させたキムさんは3日、ソウル太平路(テピョンロ)のホテルで開かれた記者懇談会で「なぜ、朴烈と文子にしたかという質問が必ずあるだろうと思って、その答えを用意していた」と話しはじめた。「昨年長編小説『白凡』を発表したことに続き、今後太平洋戦争を素材にした作品を書こうとしていたが、そのつながりとなる2人の物語をまず書くことにした」ということだ。
キムさんの歴史小説作業はこうだ。美貌と権謀術数で権力を思うままにした新羅(シンラ、B.C.57-A.D.935)時代の女性「ミシル」を素材にした同名長編小説「ミシル」で、05年に賞金1億ウォン(約770万円)の世界日報文学賞を受けたことに続き、「端宗(タンジョン、朝鮮第6代王)妃」を扱った長編「永遠に離別、永遠に離別」と「論介(ノンゲ)」など歴史小説を相次いで書いている。
特にミシルは最近放送中の時代劇「善徳(ソンドク)女王」で女優のコ・ヒョンジョンが好演し、再び話題を集めている。文学評論家の金允植(キム・ユンシク)さんは、パルチザンの闘争を素材にした長編小説「智異山(チリサン)」を論じる場で、作家の李炳注(イ・ビョンジュ)さんが、70年代初めの敏感な問題を扱うため“実録大河小説”という形に頼った、と分析したことがある。検閲を避けるための回り道として歴史小説を選んだということだ。
キム・ビョルアさんは「昨年、偶然に文子が残した獄中日記の英語版に接したのが、小説を書くことになった直接のきっかけだ」とした。「関心がある分野の無政府主義関連の書籍や資料を読んでいるうち、突出してくる人物、物語があった」ということだ。キムさんは「2人は結局破局に至る運命だったが、これを恐れず、愛しあった」とし「私は、危険な人生を生て、この世を去った人にひかれるようだ」と語った。
キムさんは「フリースクールに通う中学生の息子のため、なかなか出かけることもできず、家に閉じこもり書いてばかりいる」とした。8-9時間缶詰めの状態で、約2-3時間書くというキムさんは「歴史小説を読んでいると、女性の見地から書き直せる小説の素材がいくらでもあるという気がする」とした。
男性作家が歴史の中の女性をひとつの対象と見なし、観察する立場から小説を書くとすれば、キムさんは女性の内面を見極めるということだ。「熱愛」が朴烈より情熱の女性、文子により注目する小説になった理由だ。
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