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歌手の趙英男(チョ・ヨンナム)さんから娘のウンジさんを養子縁組したときの話を聞いたことがある。「夕方遅く、妻が赤んぼうを見てきたという乳児院に行った。院長が私にも気に入った子がいないか、一度見てみろと言う」廊下に沿って歩くのだが、後ろで保育士たちがひそひそと話していた。「ウンジならいいのに」「何カ月かすれば孤児院に行かなければならないじゃない」最初の部屋のドアを開けた。入ろうとした瞬間「そうじゃない!」という思いが頭を走った。「子どもは履物か、きれいならば選んでいき、憎ければそっぽを向けと?」院長室に帰って尋ねた。「ウンジという子供はどこにいるんですか」5歳、孤児院に行くところだった子どもはこうして彼のもとに行くことになり「チョ・ウンジ」となった。もう15年前のことだ。
昔の事情をあらためて取り挙げるのは、今日が「養子縁組の日」だからだ。1990年代だけでも「成長した子ども」を公開で養子縁組するのは非常に珍しいことだった。このごろは歳月が流れ、国内事例の半分程度は完全公開の養子縁組だ。もっと大きな変化は2007年から国内の養子縁組が海外の養子縁組件数を小幅追い越したことだ。そうだとしても韓国が世界5位圏の「赤んぼう輸出大国」には変わりがない。1958~2007年、海外養子縁組である16万人余り。累積統計では世界1位だ。
「他人はもちろん自分にも毎回アイデンティティを説明し、納得させなければならない苦痛」(養子縁組したブルック・ニューマスターさん)の中に暮らしてきた人々に、母国は加害者だ。スウェーデンに贈られた養子社会学者トビアス・フビネットさん(韓国名イ・サムドル)は「過去、韓国政府は海外養子縁組を通じて莫大な福祉費用を減らし、1件当たり4000~7000ドルの手数料まで手にした」(「海外養子縁組と韓国民族主義」)と批判する。自分たちを捨てたのは生母ではなく国家だという認識だ。これらの思いは意外にも国内養子縁組拡大より未婚の母支援だ。海外養子縁組の99%は未婚の母による子どもだ。米国に養子に行った作家ジェイン・チョン・トレンカさんが「韓国は珍島犬輸出さえ禁止する国だ。未婚の母による子供は犬より劣るという話か」と言い放った思いはいかばかりか。
そうした意味で韓国人の娘を養子縁組した米国の医師リチャード・ボアースさんの選択は特別だ。一時「捨てられた韓国の赤ちゃん」の米国養子縁組を世話した彼は、今、韓国シングルマザー支援ネットワーク代表だ。彼は問う。「子供に生母による世話よりもっといいものがあるか」養子縁組の日「養子のない日」を夢見て、韓国社会が自らに問わなければならない質問ではないのか。
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