それらの定規は二重的だった。味方の反則と特権は温情主義でかばった。盧前大統領の有力後援者とされる泰光（テグァン）失業会長の朴淵次（パク・ヨンチャ）被告と昌信（チャンシン）繊維会長の姜錦遠（カン・グムウォン）容疑者から金を受け取ったことに対し「義理と後援、生計に向けた犯罪」という見方は、そうしたところから始まる。

その時代、青瓦台（チョンワデ、大統領府）の民政首席室は粗雑だった。盧前大統領の実弟、盧建平（ノ・ゴンピョン）氏の腐敗を防げなかった。親類の管理を担当する民政業務は実勢の文在寅（ムン・ジェイン）、李鎬喆（イ・ホチョル）氏らが主導した。任務の遂行に失敗した。しかし親類の管理は大統領の意志による。盧前大統領は建平氏を「平凡な田舎者」とかばった。

退任以降の特別な野心は脱線を招く。延世（ヨンセ）大の崔平吉（チェ・ピョンギル）名誉教授は「盧前大統領は大統領経験者の独特なロールモデルを作ろうとした。このため、相当な金が必要だったのだろう」という見方を示した。退任から６カ月前に朴・姜氏らと当時の鄭相文（チョン・サンムン）青瓦台総務秘書官が集まった。「盧武鉉財団の設立」を模索した。▽巨大な私邸▽インターネット上の政治▽烽下（ポンハ）村の観光地として開発－－が主要プロジェクトだった。


一方では金の取引が始まった。盧前大統領と検察の真実ゲームの最終的な結果は未知数だ。しかし退任後の構想はつぶされた。６００万ドル（約６億円）の終着駅が「盧前大統領」に立証付けられても「逮捕」であっても変わらない。同氏の支持者は「弾劾訴追」政局当時の劇的な逆転を回想する。当時は「生きている権力」だから可能だった。変わってしまった世の中は冷たい。「盧武鉉を愛する会」の黄色い風船、バラを投げる行為は、彼らだけのイベントだ。

「道徳性という政治的な資本は挽回できないほどにつぶれてしまった。盧武鉉権力の動力となっていた３８６（６０年代に生まれ、８０年代に大学に通った世代）運動圏の政治の幕は下ろされたのだ」（韓国外国語大学の金炯仁教授）。大統領経験者が検察に出頭する事態は、追従する集団にも致命的な傷を与える。

第５共和国出身の人々は政治的な再起に失敗した。「親盧３８６」は「盧武鉉家門の後裔（こうえい）」を自任する（側近の安熙正氏の表現）。彼らが危機から脱出するのも容易ではない。盧前大統領の１日は１４年前とは異なる。しかし同氏と同氏の集団に予告された政治的な運命は似ている。



異なるようで似ている大統領経験者の墜落（１）