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古代戦争で馬は主力武器だった。特に単独騎兵を運用し始めた中国戦国時代、馬を求めることは各国間に起こったまた別の戦争だった。当時の話だ。秦の穆公は戦争に必要な駿馬を求めるために特に血眼になった。
駿馬を見抜くのに天才といわれた伯楽に穆公は頼んだ。「立派な馬の鑑別師を勧めてくれ」という内容だ。伯楽は躊躇せず九方皐という友達を紹介する。続いて九方皐は穆公の要請に従って良い馬探しに出る。
3カ月後だ。九方皐は馬1頭を引いて帰ってきた。先に宮に入った九方皐に穆公が「どんな馬なのか」と尋ねた。九方皐は「黄色のめす馬を探してきた」と答える。馬を引いてきた穆公は馬を見るやいなやがっかりする。九方皐が探してきたという馬は雄で、黒い色の馬だったということ。
怒りがこみ上げた穆公が伯楽に問いただした。「馬の毛色はもちろん、雄と雌さえ区別できない人をどうして勧めたのか」という叱責だった。伯楽の反応が意外だ。言い訳を並べるかと思ったが、そうではなかった。むしろ「その人の眼識が本当にそれだけ境地に至ったな…」と感嘆する。
伯楽の説明といえばこうだ。毛と革には目をくれないが、その能力をつかみ出すこと、本質はすぐ直視するが、外在的な形象は見ない水準、すなわち見なければならないことは必ず見るが、見なくても良いことは見ないのが最高の境地という説明だ。九方皐が引いてきた馬が天下の駿馬だったことは問わずしてわかることだ。
「列子」にあるエピソードだ。関連成語として「牝牡驪黄」ができた。雄と雌を示す牝牡、全身が真っ黒の色の馬を称える黒毛の馬(驪)と黄色の馬を称える字4つで成立している。事物の本質にそっぽを向いて売上にばかり重点を置くことに対する警戒だ。
尹増鉉(ユン・ジュンヒョン)企画財政部長官が21日、国会予算決定特委でまたやり玉に挙げられた。前任の姜万洙(カン・マンス)長官が「最近、サムギョプサル(三枚肉、ここでは豚肉)の値段がいくらだと思うか」という国会議員の問いに、その価格を知らずに困境に陥ったことの二の舞だ。このごろ急激に上がっているというサムギョプサルの価格を知らず、尹長官が黙り込んだ。しかしサムギョプサルの値段を知らないからといって長官の資格がないわけではない。
国会議員の質問もこれから水準を高めなければならない。サムギョプサルの値段を聞いたあと、黙り込む長官を見ながら「してやったり」と快哉を叫ぶことではない。資質を磨き、政策の核心に近づかなければならない。「国会サムギョプサル」はそんな点でもう退出の対象だ。そんなことに耽溺するならその国会議員も同じ。
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