2000年9月、済州(チェジュ)で開かれた初の南北国防相会談を取材したときのことだ。板門店を越えた金鎰哲(キム・イクチョル)人民武力部長一行の若い将校たちは、城南(ソンナム)飛行場まで大型バスで移動した。一行はバスの左側2席のうち廊下側の席に1人ずつ1列に座った。韓国側が見せようとする63ビルや江南大路の賑やかな様子は見ないという申し出だった。しかしだからといって一切見ないというわけにいくだろうか。飛行場に降りる人々の顔に表れた錯綜した表情を私は今も忘れることができない。いじけないようにと母親が何度も言ったのにもかかわらず、いい暮らしをする友達の家で初めて見たおもちゃや学用品に、帰宅の途に就く足どりが重かった子供の心情と似ていようか。感性的なアプローチだけでは北朝鮮問題を解決することができないということを知りながらも、私はしばらく北朝鮮問題を考える度に、あのときの経験から抜けだすことはできなかった。自分の経験を客観的で冷静に振り返ることは決してたやすいことではない。
北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)政権も単線的な経験にとらわれて、未来をまともに見ることができないという過ちを犯しているのではないか。2006年10月、北朝鮮が核実験を強行した際、私は「6カ国協議はもう終わりだ」と思った。しかし3カ月で朝米はベルリンで会い、翌年2月13日、北朝鮮核問題の進展した合意が成立した。昨年8月、北朝鮮が約束した核施設検証がきちんと成立しないと、米国は北朝鮮のテロ支援国解除時期を延ばした。北朝鮮は直ちに「核施設を復旧させる」という脅し文句で対立した。ジョージ・ブッシュ米政権は退いた。今年1月「金正日国防委員長と会う用意がある」というバラク・オバマ新政府が発足すると、世界は朝米関係の進展を予想した。しかし北朝鮮はざまみろといったようにミサイル発射を強行、有利な交渉位置先行獲得に立ち上がった。国連安保理が力強い非難声明と制裁方針を打ち出したが、北朝鮮はものともせず6カ国協議拒否と国際原子力機関(IAEA)査察要員追放カードで対立した。「成功した経験」の奴隷になってしまった北朝鮮は今「瀬戸際戦術」を「検証された戦略」くらいに考えるようだ。
しかし北朝鮮のこうした対応は、状況をますます難しくするだけだ。北朝鮮の行動を繰り返し経験した韓国と米国は、過去と類似の対応方式を選びにくい。米政府関係者は「スティーブン・ボスワース対北政策特別代表が公開的に平壌訪問の意思を明らかにしているのに北朝鮮はこれを徹底的に無視している。これ以上そうすればもの乞いに見える」と言った。昨年、大統領選挙当時、オバマキャンプで働いた関係者は「今のような経済危機の状況でミサイルまで打った北朝鮮をオバマが助けると言った場合、これを支持する米国人がどれだけいるか」と問い返した。
すでに北朝鮮を過去の経験から脱却させなければならない時になったようだ。北朝鮮が要求することと韓国そして西方世界が受け入れることの間が大きくなればなるほど妥協の可能性は減るほかないからだ。時間は決して北朝鮮の味方ではない。
北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)政権も単線的な経験にとらわれて、未来をまともに見ることができないという過ちを犯しているのではないか。2006年10月、北朝鮮が核実験を強行した際、私は「6カ国協議はもう終わりだ」と思った。しかし3カ月で朝米はベルリンで会い、翌年2月13日、北朝鮮核問題の進展した合意が成立した。昨年8月、北朝鮮が約束した核施設検証がきちんと成立しないと、米国は北朝鮮のテロ支援国解除時期を延ばした。北朝鮮は直ちに「核施設を復旧させる」という脅し文句で対立した。ジョージ・ブッシュ米政権は退いた。今年1月「金正日国防委員長と会う用意がある」というバラク・オバマ新政府が発足すると、世界は朝米関係の進展を予想した。しかし北朝鮮はざまみろといったようにミサイル発射を強行、有利な交渉位置先行獲得に立ち上がった。国連安保理が力強い非難声明と制裁方針を打ち出したが、北朝鮮はものともせず6カ国協議拒否と国際原子力機関(IAEA)査察要員追放カードで対立した。「成功した経験」の奴隷になってしまった北朝鮮は今「瀬戸際戦術」を「検証された戦略」くらいに考えるようだ。
しかし北朝鮮のこうした対応は、状況をますます難しくするだけだ。北朝鮮の行動を繰り返し経験した韓国と米国は、過去と類似の対応方式を選びにくい。米政府関係者は「スティーブン・ボスワース対北政策特別代表が公開的に平壌訪問の意思を明らかにしているのに北朝鮮はこれを徹底的に無視している。これ以上そうすればもの乞いに見える」と言った。昨年、大統領選挙当時、オバマキャンプで働いた関係者は「今のような経済危機の状況でミサイルまで打った北朝鮮をオバマが助けると言った場合、これを支持する米国人がどれだけいるか」と問い返した。
すでに北朝鮮を過去の経験から脱却させなければならない時になったようだ。北朝鮮が要求することと韓国そして西方世界が受け入れることの間が大きくなればなるほど妥協の可能性は減るほかないからだ。時間は決して北朝鮮の味方ではない。
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