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【社説】国民をいつまでアスベストの恐怖に震えさせるのか

さすが「手遅れになってから騒ぐ行政の達人」らしい。国民をアスベストの恐怖の渦に落とし入れた食品医薬品安全庁のことだ。同庁はすでに5年前にベビーパウダーの原料として使われるタルク(滑石)に危険性があるという事実を知っていたという。それを指摘した研究報告書の提出を受けても何の措置を取らなかったのだ。2005年と2006年に欧州と米国が相次いでベビーパウダーなど乳幼児製品にタルクを使えないよう規制に乗り出した時もただ腕組みしているだけだった。今回もある放送局が番組で問題を提起した後になりようやく調査に取りかかり、市販中のベビーパウダー30種類のうち3分の1以上の12種類からアスベストが検出されたと明らかにした。無責任な公務員が業務に怠慢な間に子どもたちの顔と体に1級発がん物質がまんべんなく塗られたことを考えると憤怒を禁じ得ない。

遅れて事態の深刻さを理解した食品医薬品安全庁は調査結果を発表した翌日にタルクを原料に使う製品に対し市販前のアスベスト検査を義務化する告示案をまとめた。消費者の不安を考え、関連手続きを省略したまますぐに施行に入るという説明まで付け足した。その気になればこれだけ迅速に処理できることを5年も放置してきたというからあきれたものだ。昨年の中国産のメラミン粉乳問題のときに安易な認識と後手に回った対応で批判されながらまだしっかりとできないのか。

ベビーパウダーに触発されたアスベスト問題は化粧品に次いで医薬品・生活用品にまで拡大し、国民の不安感も大きくなっている。毎日飲んだり使ったりする製品が安全なのか戦々恐々としている。それでも食品医薬品安全庁の対応は依然としてまごついている。アスベストが検出されたタルク供給会社8社を公開しただけで、このタルクの供給を受けたメーカーがどこなのか、これらメーカーが製造した製品はどのように処理するのかなどについて明確な方針を出せずにいる。むしろ化粧品業界と製薬業界が素早く対応に乗り出し、問題となる製品を自主回収するというから並大抵の滑稽さではない。


食品医薬品安全庁は専門家の意見を取りまとめて化粧品と医薬品に含まれるアスベストの安全性基準を速やかに提示しなくてはならない。問題となる原料の供給を受けたメーカーについては徹底した措置を取り結果を速やかに明らかにしなくてはならない。食品医薬品安全庁の管轄ではない生活用品、撤去工事現場、地下鉄駅などでのアスベストの危険についても措置が必要だ。むだな恐怖をぬぐい去るためにも政府は危険の程度をしっかりと知らせ、その場しのぎではない根本的な対策づくりに乗り出すべきだ。



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