バズ・ラーマン監督の映画「ムーラン・ルージュは激動の時代の１９世紀末、パリのショー・ビジネス世界を舞台にしている。最高の興行会社ジドラーは以前になかった規模の新しい舞台を演出するため、投資者を探し、権力者である公爵は投資の対価としてムーラン・ルージュ最高の美女サティーンとのひと晩を要求する。

遠い国の話ばかりではない。イ・ジュンイク監督の「王の男」導入部は社堂輩がひともめ起こした対価としてその村の首領にひと晩の遊び相手として捧げられたコンギル（イ・ジュンギ）の姿を見せてくれる。この映画のコンギルは男色の生けにえだったが１９２７年出版された李能和（イ・ヌンファ）の「朝鮮解語花史」に出る「女社堂自嘆歌」を見れば似ていることは主に女社堂に起きたことであるのがわかる。

長年の昔から芸人の世界には世人の関心を集めるに値する魅力的な男女が集まり、それだけいつもその周辺には権力とお金を利用した誘惑が存在してきた。特に資本主義発達とともにその結託は時に公然と花を咲かせた。エミール・ゾラの小説「ナナ」は、立場的に女優と娼婦の区別がつきにくい時代の堕落を見せてくれる作品でもある。


隠密な取り引きの歴史があまり長かったのでそのつながりを絶つことはたやすいことではない。自発的な取り引きと強要された取り引きの区分も水の上に引く筋のように不明だ。ある若い女優の死で明らかになった一連の事実は氷山の一角かもしれない。芸能界ではすでにヒットした活動がなくてもＣＭを独占している一部スターに対し、広告主との隠密な結託をひそひそと行うようになって久しい。一瞬に浮上したスターには常に「何かある」といううわさが付きまとったりする。

今回の事件を通じて誰か女優に性を利用した接待を強制指示した事実が現れて、一部関連者の処罰ができるかもしれない。しかし根本的に「第２のチャン・ジャヨン」をなくす案は目に止まらないというのが問題だ。代案として提示される透明な契約関係や公開オーディションの拡大、零細企画会社の収益構造改善などがすべて解決するといっても暗い取り引きを願う人はたやすく新しい方法を見つけ出すからだ。

権力とお金が持っている特恵に対する欲望が消えない限り、いわゆる特権層が芸能人に対する誘惑の手を止めない限り、法や制度で阻むことができない醜い取り引きはずっと続くほかない。老子がかつて言った「足るを知ればはずかしめられず、止まることを知ればあやうからず（知足不辱 知止不殆）」は誘惑する方も、誘惑に引かれる方も、聞いて心に留めなければならない警句だ。